バイオマーカー・トピックス(No19.2008年7月1日)
バイオマーカーの探索・発見・適応への関心が内外で急速に高まってきています。トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等のポストゲノミクス研究の急速な進歩と実用化、テーラーメイド医療の進展、癌などの各種疾病の早期発見・診断への関心の高まりなどを背景に、それに寄与できるバイオマーカーが注目されてきているからです。
「バイオマーカー・トピックス」は内外で発信される数多くのニュースや雑誌記事、論文などから適宜選んで、その要約やポイントを日本語で紹介するものです。
皆様の研究活動やビジネスに少しでも役立てばと願っています。
なお、翻訳はサイリックが担当しており、専門用語などは的確でない場合もあることをご容赦ください。また長文の場合はサイリックの判断で一部のみを紹介しています。正確なことは直接原典で確認してください。(多田 丞)
<目次>
(財)名古屋産業科学研究所 中部TLO(名古屋大学事業部)、「急性腎障害のバイオマーカー及びその用途」に関する特許... 3
カリフォルニア州のDNA試験の「中止・中断」勧告に対して企業の対応わかれる―少なくとも、それらは創造的な反応を得た... 4
●California's cease-and-desist letters. 5
ロシュ・ダイアグノスティックス、7月よりDNA解読の前処理の受託ビジネスを始める.. 6
<特集>日経BP「がんナビ」ニュースからの「バイオマーカー」関連ニュース(2008年1月‐6月) 7
ベバシズマブはK-Ras変異の有無にかかわらず大腸がんに有効... 7
【ASCO】甲状腺機能障害がスニチニブの有効性を示すバイオマーカーの可能性... 9
初期乳がんの術後の治療法選択に役立つサイトが紹介... 10
HPV16抗体価が高い口腔咽頭がんは治癒率が高い... 10
子宮内膜症の卵巣がん化を調べる大規模調査が進行中... 12
複数の遺伝子情報で乳がん再発の予測精度を上げる試み... 15
骨髄由来の血管内皮前駆細胞はベバシズマブのバイオマーカーとして有望... 15
EGFR変異をもつ全身状態不良の非小細胞肺がんにはゲフィチニブが有効... 16
乳がん遺伝子BRCA1とBRCA2のいずれに変異を有するかにより予防的卵巣摘出術の利益は異なる 18
赤血球関連遺伝子群で骨髄異形成症候群におけるレナリドミドの有効性を予測... 18
子宮頸がん発症リスクの高いHPVを検出する遺伝子検査薬が年内に発売へ... 19
MMP9がタルセバとセレブレックスの併用で効果が得られる肺がん症例を判定するバイオマーカーの可能性 19
BRCA1、BRCA2キャリアの間でも乳がんリスクに差... 20
BRCA1/2遺伝子変異有りでは変異無しに比べて卵巣がんの治療効果が高い可能性... 21
(2008年6月6日)
(財)名古屋産業科学研究所 中部TLO(名古屋大学事業部)、「急性腎障害のバイオマーカー及びその用途」に関する特許
公開番号:未公開特許
整理番号:NU-0200
データ収録日:2008年6月6日
出願番号:特願2008-048954
出願日:2008年2月29日
発明の名称:急性腎障害のバイオマーカー及びその用途
発明の概要:尿中ミッドカインを指標とした急性腎障害の迅速診断法。従来の診断マーカ
ー(NNAG, IL-18,KIM-1, NHE3, KC, L-FABP)に比べ早期に急性腎障害の判
定が可能となり、これにより早期治療介入が可能となり、特に術後ICU管理
を要する疾患での生命予後の改善を飛躍的に向上させうる。本診断法の有
用性は50症例のパイロット試験で確認している。
問合せ先:(財)名古屋産業科学研究所 中部TLO(名古屋大学事業部)
〒464-8603愛知県名古屋市千種区不老町(名古屋大学VBL棟4階)
Tel: 052‐783‐1255
Fax: 052‐788‐6012
URL: http://www.ctlo.org/
(2008年6月5日、12日)
バイオマーカーとは
大阪府立成人病センター研究所免疫学部門総括研究員、宮本泰豪
(毎日新聞 「続がん50話-第11話・バイオマーカーとは」)
今回は「バイオマーカー」について述べます。
バイオマーカーは血液中や尿中、あるいは身体の組織の中に含まれる物質で、身体の状態を知るうえで定量的な指標(マーカー)となるものです。物質としては遺伝子、たんぱく質、ペプチド(たんぱく質の断片)、脂肪や糖質などの小さな代謝物などがあげられます。肝臓の機能を調べる際のGOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)やGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)もよく知られているバイオマーカーです。糖尿病の診断に使われる血糖やヘモグロビンA1c、動脈硬化に関連するコレステロールなども、広い意味ではバイオマーカーと言えるでしょう。
近年、新しいバイオマーカーの探索研究が盛んに行われています。その背景の一つとして、科学技術の発展、とりわけ、たんぱく質などの高分子物質の質量分析技術が飛躍的に向上したことがあげられます。
02年のノーベル化学賞に、たんぱく質の質量分析法の確立に大いに貢献したとして、2人の科学者(1人は島津製作所の田中耕一氏)が選ばれたことは記憶に新しいところでしょう。
血液や尿中で、バイオマーカーの候補のたんぱく質が発見された場合、たとえそれが極微量であっても、質量分析法を用いることにより、どのようなものであるかが比較的容易に見極められるようになりました。
病気の状態を客観的に評価できるバイオマーカーが発見されれば、診断、予防、薬の有効性の判定、予後の予測、さらには新薬開発などに応用できることが大いに期待できます。
新しいバイオマーカーの発見、それに続く臨床への応用は、21世紀のバイオ産業を支える基盤となる可能性を秘めています。それゆえ、世界の大学や企業などではさまざまな疾患のバイオマーカー探索に力を注いでいます。
次回はがんのバイオマーカーについてお話しします。(大)
毎日新聞 2008年6月5日 大阪朝刊
(2008年6月12日)
マーカー研究に期待
大阪府立成人病センター研究所免疫学部門総括研究員、宮本泰豪
(毎日新聞 「続がん50話-第12話・マーカー研究に期待」)
前回は、身体の状態を知るうえで定量的な指標となる「バイオマーカー」について説明しました。今回はがんに関してのバイオマーカーのお話です。
がんについては「腫瘍(しゅよう)マーカー」と呼ばれるものが既に多数見つかっています。例えば、肝臓がんのアルファフェトプロテイン(AFP)、大腸がんのCEA、前立腺がんのPSA、すい臓がんなどのCA19-9などです。
これらの血中の濃度を測定することは診断や治療後の経過観察に役立っていますが、がんを早期の段階で発見することはなかなか難しいのが現状です。
そこで、がんを早く発見することができるようなバイオマーカーの探索が求められています。具体的には、がんの患者さんと、がんでない人の血液や尿に含まれるさまざまなたんぱく質の量を比較し、患者さんだけに見つかるものがあると、バイオマーカーの候補となり、詳しく研究されることになります。
また、同じがんでも抗がん剤の効果は患者さんによってさまざまです。この抗がん剤の効果を予測するマーカーは、いくつかのがんに限っては、遺伝子の変異や発現量の違いで予測できるようになりつつあります。
さらに、同じような進行度のがんと診断されて治療を行っても、その後の転移などにより、予後(病後の経過)が悪い患者さんから完治する患者さんまでさまざまです。
患者さんの予後が予測できれば、手術などの治療の後のフォローアップに大変役立ちますが、残念ながら、現時点では、予後の予測に有効なバイオマーカーは見つかっておらず、今後の研究に期待がかかっています。(大阪府立成人病センター研究所免疫学部門総括研究員、宮本泰豪)
毎日新聞 2008年6月12日 大阪朝刊
(2008年6月25日)
カリフォルニア州のDNA試験の「中止・中断」勧告に対して企業の対応わかれる―少なくとも、それらは創造的な反応を得た
カリフォルニア州政府のHealth and Human Services Agencyは、2008年6月9日、州内でDNA検査を実施している13の企業(下記の参考情報参照)に対して、違法なDNA 検査を「中止及び中断」するよう勧告したが(California's cease-and-desist letters:下記の参考情報参照)、これに対する各社の返事の期限が先週までに過ぎた。この間、興味のある対応が進められていた。
ターゲットとされた13の会社のうち、いくつかの企業は既に中止している。その一方で大手の2社は、戦いを続けることを決定している。
そのうちの1社である23andMe社は、(当社での)DNA試験は、この試験を始めた時からCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendment)が保証しているラボにおいて、正当に実行されていると主張して、継続を表明している。
また、もう1社のNavigenics社は、実際上DNAを使用しないでデータを分析できる別の方法を取り始めている、と表明している。
管理当局のダニエル・マッカーサー部長は、これから多くのことが起こると見ているが、この産業のために最も望ましいことは、プレーヤーがDNA試験をもっとしっかりやることだと語っている。
彼は『Genetic Future』誌に「これは恐らく我々が望むことができる最良の結果である。消費者には自分自身のDNA を解析することについて、医者の許可を求めることなく実施できる自由を望んでいる。当局としては、この産業が詐欺師的なことをやめ正常化されていくことで、さらにレベルアップしていくと感じているし、この重要な潮流を枯らすことにはならないだろう」と書いている。
(Genetec Technology Online 2008年6月25日、他のニューズレターから)
<参考情報>
●勧告を受けた13の企業
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Company |
Website |
Testing Type |
Model |
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23andMe |
Broad genome scans |
Info only |
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CGC Genetics |
Individual disease and gene tests |
Info only |
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deCODEme Genetics |
Broad genome scans |
Info only |
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DNA Traits |
Heritable disease testing |
Info only |
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Gene Essence |
Genome wide arrays |
Info only |
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HairDX |
Hair loss risk assessment |
Infoct |
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Knome |
Whole genome scans |
Info only |
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Navigenics |
Broad genome scans |
Info only |
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New Hope Medical |
Nutrigenetic testing |
Info+productct |
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Salugen |
Nutrigenetic testing |
Info+productct |
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Sciona |
Nutrigenetic testing |
Info+productct |
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Smart Genetics |
Alzheimer's risk testing |
Info only |
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Suracell |
Nutrigenetic testing |
Info+productct |
●California's cease-and-desist letters
省略
(2008年6月)
Applied Biosystems/MDS SCIEX Events Featuring New One Touch Productivity Software at ASMS 2008
Applied Biosystems/MDS SCIEX will be present at the ASMS Conference on Mass Spectrometry from June 1–5 in Denver, Colo. Visit booth #137 to learn more about their industry-leading LC/MS systems and various new applications-specific software featuring One Touch Productivity.
The Applied Biosystems/MDS SCIEX Users Meeting will be at the Hyatt Regency Denver on Sunday, June 1st and is divided into three concurrent tracks—pharmaceutical & small molecule research, protein & biomarker research, and food/environmental/forensics/clinical research. Register for the Users Meeting now by visiting the Article Webpage.
Also, join them in their Hospitality Suite Monday through Wednesday 6:30 PM - 9:30 PM at the Adams Mark/Sheraton Hotel in Grand Ballroom I.
(2008年6月27日)
ロシュ・ダイアグノスティックス、7月よりDNA解読の前処理の受託ビジネスを始める
ロシュ・ダイアグノスティックス㈱(本社:東京都港区 代表:社長兼CEO 小川渉)は、2008年7月2日より、研究用としてロシュ・ニンブルジェン社製高密度DNAマイクロアレイを利用した「シークエンスキャプチャー技術」によるゲノム抽出の受託サービスを開始すると発表した。
このサービスを利用することで、ゲノムのターゲット領域を低コストで効率よく抽出でき、次世代DNAシークエンサーによる再シークエンスを圧倒的に有利な条件でおこなうことができるとしている。
「シークエンスキャプチャー技術」は、高密度DNAマイクロアレイを利用し、アレイ1枚あたり最大500万塩基までのゲノムのターゲット領域を、低コストで効率よく抽出することを実現しました。この技術により、これまで経済的・技術的に難しかった広範囲なターゲット領域に対する再シークエンスが容易におこなえる。がんや生活習慣病などの疾患の要因となる遺伝子の個人差(SNP:一塩基多型などの変異)が含まれるゲノム領域を、選択的、広範囲に抽出できるため、同社が既に販売している「GS FLX」のような次世代DNAシークエンサーによる配列解読を、コストを抑えて効率的におこなえ、その能力を最大限に引き出せるとしている。
DNAチップをオーダーメードで作製し、狙った部分だけを取り出すため、効率的に解読できる、としている。
【受託サービス特性】
DNAマイクロアレイ1枚で最大500万塩基までの広範囲にわたるターゲット領域のゲノム抽出が可能
低コストで効率よくターゲット領域を抽出
(PCR法ベースの抽出方法と比べ、コストは10分の1以下、時間は5分の1以下に)
お客様のご要望に応じ、テーラーメードでターゲット領域に対するDNAマイクロアレイを設計・作製
【受託サービス価格(税抜き)】
大学・研究施設向け:100万円~、 企業向け:120万円~ (DNAマイクロアレイ設計・作製価格込み)
【受託サービスご依頼のお問い合わせ先】
AS事業部 シークエンス&アレイビジネス部 : 03-5443-5204
(同社のホームページ及び日経産業新聞記事などより作成)
(2008年7月1日)
厚労省、薬の副作用すべて調査
厚生労働省の薬害肝炎問題を検証する第三者委員会は6月30日、国内で報告のあった医薬品の副作用に関するすべての症例報告を検証するよう求める中間報告をまとめた。
これを受けて、同省は、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」の人員を大幅に増強するなど全症例の調査に向けた体制作りを整備する方針だ。
国内の副作用情報は年間約3万2千件。さらに海外からの約9万5千件に上る。このうち、同機構が内容を分析できているのは国内で死亡や重大な障害を残した事例など約1万件にとどまる。中間報告は、「医薬品の評価や分析が多角的に行われる状況ではない」と指摘。「すべての症例の精査が必要」と結論付けている。
一日に寄せられる副作用情報は平均で国内130件、海外380に上る。現在の機構の体制では個別に分析できるのは、このうち40件程度が限界とされる。
厚労省は具体的な対策として現在、同省と機構とを合わせて35人程度の副作用対策の人員を300人規模の体制に拡大することなどを検討している。
実施時期を含めて、来年度予算の概算要求に反映する方針。
すべての症例情報を個別に精査することで、医薬品の安全性への監視を強めることに加えて、副作用を起こしやすい患者を早期に分類し、医師が患者に処方する際のリスク管理に役立てられるという。
(日本経済新聞2008年7月1日付)
<特集>日経BP「がんナビ」ニュースからの「バイオマーカー」関連ニュース(2008年1月‐6月)
2008年06月30日
ベバシズマブはK-Ras変異の有無にかかわらず大腸がんに有効
スイスHoffmann-La Roche社は、2008年6月26日、過去に行われたフェーズ3試験で採取された腫瘍標本を分析したところ、抗血管内皮成長因子(VEGF)抗体製剤ベバシズマブは、K-Ras変異の有無にかかわらず転移性大腸がん患者の生存期間を有意に延長することが確認されたと発表した。詳細は、スペインのBarcelonaで開催された第10回世界消化器がん会議で報告された。
米Duke大学のHerbert Hurwitz氏が主任研究官を務めたベバシズマブフェーズ3 AVF2107は、治療歴のない転移性大腸がん患者800人超を対象とする無作為化試験で、化学療法(イリノテカン、フルオロウラシル、ロイコボリン:IFL)のみと、これらにベバシズマブを併用した場合の有効性と安全性が比較された。
AVF2107試験の結果は、ベバシズマブにとって最初の市販許可獲得に大きく貢献した。この製品は、米国で2004年2月、欧州では2005年1月に、転移性大腸がんに対する第一選択として5-FU系抗がん剤と併用する許可を得ている。
今回学会発表されたのは、AVF2107試験で前向きに採取された腫瘍標本のK-Rasの状態を分析し、治療効果との関係を調べた研究の結果だ。大腸がん患者の約半数はK-Rasに変異がある。研究者たちは、K-Ras遺伝子に変異があるかどうかで患者を2分して分析した。標本は当初の被験者の約1/3に相当する230人から得られていた。
K-Ras遺伝子に変異がない野生型の患者では、化学療法群に比べベバシズマブ群で、無増悪生存期間が82%長く(7.4カ月と13.5カ月)、全生存期間が57%長く(17.6カ月と27.7カ月)、奏効率も有意に高かった(化学療法のみ群では37%、ベバシズマブ群では60%)。
K-Ras変異あり群でも、化学療法のみに比べ無増悪生存期間の69%延長(5.5カ月と9.4カ月)が見られた。
これらの結果は、K-Ras変異の有無にかかわらずベバシズマブは第一選択薬として有効であること、また、ベバシズマブ適用に先駆けてK-Ras変異の有無を調べる必要はないことを示した。
2008年1月、EUは、ベバシズマブとフルオロピリミジン・ベースの化学療法剤を、転移性大腸がん患者に対する第一選択として、またそれ以降の治療選択において併用する許可を得た。これは、実質的に全ての転移性大腸がん患者がベバシズマブの利益を得られることを意味する。
(大西 淳子=医学ライター)
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2008年06月23日
ビタミンDで結腸直腸がん患者の予後が改善
結腸直腸がん患者において、診断前の血中ビタミンD濃度が高い人の方が予後が良いことが、2つの疫学研究を分析した結果から示唆された。データはDana-Farber Cancer InstituteのKimmie Ng氏らが、Journal of Clinical Oncology誌6月20日号に発表した。ただし、治療の一環としてビタミンDのサプリメントを推奨することは時期尚早であるとしている。
これまでの研究で、血液中のビタミンDの指標である25-ヒドロキシビタミンD3(以下、25(OH)D)濃度が高いほど、結腸直腸がんの発症リスクは低く、最大50%まで低下させるといわれている。Ng氏ら研究グループは、結腸直腸がん患者において、ビタミンDの生存への影響を調べるため、2つの長期疫学研究を分析した。
対象は、Nurses' Health Study およびHealth Professionals Follow-Up Studyに参加し、1991年から2002年の間に結腸直腸がんと診断された304人。全員が診断の2年以上前に採血をし、25(OH)D濃度を測定していた。2005年までに123人が死亡、うち結腸直腸がんによる死亡は96人だった。
分析の結果、25(OH)D濃度が高い人ほど、死亡率は有意に低かった(p=0.02)。また25(OH)D濃度により患者を4群に分けたところ、25(OH)D濃度が最も高かった群は、最も低かった群に比べて、全死亡リスクが48%低いことが示された(ハザード比が0.52、95%信頼区間 0.29-0.94)。結腸直腸がんによる死亡リスクも低い傾向が見られた(ハザード比が0.61、95%信頼区間 0.31-1.19)。
研究グループは、今後、発がんやがんの進行におけるビタミンDの経路や影響について研究が必要であるとし、さらに将来的には結腸直腸がん患者において、ビタミンDサプリメントの役割を調べる試験を行うべきだろうとした。
(八倉巻 尚子=医学ライター)
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2008年06月20日
セツキシマブが結腸・直腸がん対象に承認へ
メルクが申請している抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体セツキシマブ(商品名「アービタックス」)の承認が6月17日に行われた薬事・食品衛生審議会薬事分科会で了承された。7月中にも正式承認になる見通しだ。
認められる適応症は「EGFR陽性の切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」。承認条件として市販後の全例調査が義務付けられた。
2008年06月19日
【ASCO】甲状腺機能障害がスニチニブの有効性を示すバイオマーカーの可能性
マルチキナーゼ阻害剤のスニチニブによる腎細胞がんへの効果と甲状腺機能障害とが関連している可能性が指摘された。甲状腺機能障害が治療効果を予測するバイオマーカーになるかもしれない。成果は5月30日から6月3日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)ベルギーUniversity Hospital GasthuisbergのPascal Wolter氏によって発表された。
研究グループはいくつかの研究で、スニチニブの治療を受けた患者の約3分の2で甲状腺機能障害が報告されていたことから、スニチニブの効果と甲状腺機能障害の関係を調べた。転移性でサイトカイン療法に耐性か不適応の腎細胞がん患者53人を対象に試験は行われた。甲状腺疾患があるか、4週間以下のスニチニブ投与で甲状腺ホルモン補充療法を受けた患者は評価対象から除かれた。スニチニブの投与は、1日当たり50mgを経口で4週間投与し、2週間休薬するスケジュールで行われた。
評価の対象となった患者は40人(男性30人)、投与開始時の年齢中央値は59歳(42-81)だった。試験の結果甲状腺機能に異常を起こさなかったのは12人(30%)のみで、残りの28人は何らかの甲状腺機能障害を起こした。13人(32.5%)の患者が治療が必要な臨床上の甲状腺機能低下症を起こし、少なくとも1回甲状腺刺激ホルモンが上昇した患者が12人(30%)、低下した患者が3人(7.5%)いた。
甲状腺機能障害と効果の関係を調べたところ、生化学的に甲状腺機能障害がない患者の全生存期間(OS)中央値は6.6カ月(95%信頼区間3.3-7.9)だったのに対して、異常が見られた患者では18.2カ月(95%信頼区間7.5-22.3)と長くなる傾向が認められた。
また、全体の奏効率は19人が部分奏効(PR)に到達し47.5%だったが、臨床上の甲状腺機能低下症を起こした患者に限定すると61.5%で、甲状腺機能障害のない患者では25%に留まっていた。
(横山 勇生)
「がんナビ通信」
2008年05月19日
初期乳がんの術後の治療法選択に役立つサイトが紹介
国立病院機構九州がんセンター乳腺科部長の大野真司氏は、5月15日、長崎市で開催された日本外科学会の国際シンポジウム「乳癌治療におけるControversy」の中で、「化学療法、分子標的薬のControversy」というタイトルで講演を行い、手術後の治療とリスク評価をウェブサイトで試みる「Adjuvant! Online」(https://www.newadjuvant.com)を紹介した。
このサイトでは、がんの術後の治療法の選択について、6から7つの因子を選定することで再発のリスクを算出する。現在は更新作業に入っており利用できないが、患者にどのくらいのリスクがあるかを説明するのに役立つという。大野氏はこのサイトのデータが北米のデータに基づいて作られており、日本の過去のデータを照らし合わせていくことが重要だと指摘した。
乳癌では、転移陰性でホルモン受容体陽性HER2陽性という例や、転移陽性(1~3個)でホルモン受容体陽性HER2陰性という例のような、中等度のリスクの初期乳がん患者の治療の選択が最も議論のあるところで、実際にそうした患者が最も多いと大野氏は話す。現状では、海外のガイドラインで推奨されている治療選択(手術のみ、手術とホルモン療法、手術とホルモン療法と薬物療法)が、必ずしもそのまま選ばれていない。同氏は4つの中等度リスクの症例を「Adjuvant! Online」に当てはめ、10年以内の再発のリスクが手術のみだとどれくらいで、手術とホルモン療法だとどのくらいで、手術とホルモン療法と薬物療法だとどのくらいと具体的に説明し、有用性をデモンストレーションしてみせた。
同氏は次に、遺伝子を用いて分子標的薬も含めた薬物療法まで受ける患者を見分けることが将来的な治療の選択法になると語った。具体的には、有効性が報告されている70遺伝子を使った方法と21個の遺伝子を使う「OncotypeDX」といった製品を紹介。現在、それぞれの有効性を検証するための大規模臨床試験MINDACT試験とTAILORx試験が行われていることを説明した。
最後に日本でも中等度リスクの患者に対する治療法を検証するための臨床試験であるNSASBC-06が始まっていることを紹介した。NSASBC-06試験はホルモン受容体陽性でN0の閉経後の患者を対象に、まずホルモン療法を6カ月行う。そして、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定状態(SD)が得られた患者を、手術後に薬物療法を行ったあとホルモン療法を4.5年行う群と、ホルモン療法を4.5年のみ行う群に無作為に割り付けて評価するものだ。
(横山 勇生)
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2008年05月16日
HPV16抗体価が高い口腔咽頭がんは治癒率が高い
米ミシガン大学総合がんセンターなどの研究者たちは、特定のマーカーを指標とすれば、化学療法と放射線治療により治癒が望める口腔咽頭がんの患者を見分けられる可能性を示した。この発見について報告した2本の論文は、Journal of Clinical Oncology誌電子版で2008年5月12日に公表された。同誌掲載は7月1日号になる予定。
これらの研究は口腔咽頭がんのリスク分類を明らかにする試みだ。喫煙率の低下により喫煙が原因の頭頸部腫瘍は減少したが、一方でハイリスクのヒト・パピローマウイルス(HPV)感染に起因する頭頸部腫瘍が増加している。また、治療には強力な化学療法と放射線治療が適用されるが、患者の反応性は個人差が大きい。そこで著者らは、治療によく反応する要因を探るため、バイオマーカーの探索を行った。
66人の進行した口腔咽頭の扁平上皮がん患者(ステージ3または4)を対象に、標準的な化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチンとフルオロウラシルの併用)を1クール行い(導入化学療法)、反応を調べた。
導入化学療法で腫瘍の大きさが当初の1/2未満まで縮小した54人(81%)の患者は化学放射線併用療法群に割り付け、70Gyの放射線治療とシスプラチンまたはカルボプラチンの投与を並行する治療を3クール継続した。組織学的に感受性のある患者にはパクリタキセルの補助療法が追加された。導入化学療法後に腫瘍が1/2以上の大きさを保っていた患者については、外科的切除を行い、その後放射線を照射した。
化学放射線併用療法を受けた患者のうち、49人(92%)が組織学的完全奏効を見た。追跡期間の中央値64.1カ月の時点の分析で、4年全生存率は70.4%、疾病特異的生存率は75.8%だった。62%はがんの再発無しに生存していた。このグループでは47人が臓器を完全に保存できた。
手術を受けたグループでは、生存は11人中4人に留まった。
治療前に生検が行われた42人について、標本を対象に検査を実施。27人(64.3%)でハイリスク型HPV16が陽性だった。陽性者は、より若い患者、男性、非喫煙者に多かった。HPV16の抗体価は、導入化学療法に対する反応率、化学放射線併用療法の奏効率、全生存率、疾患特異的生存率と有意な相関があった。
加えて研究者たちは、上皮成長因子受容体(EGFR)、Bcl-xL、p53といった各種マーカーと、治療に対する反応、生存との関係も調べた。
EGFRの発現は、現在の喫煙、女性、HPV抗体価の減少と相関しており、導入化学療法や化学放射線併用療法に対する反応、全生存率、疾病特異的生存率と負の相関を示した。マーカーの組み合わせでは、HPVの抗体価が低くEGFRが過剰に発現している場合に、全生存率、疾病特異的生存率が最も悪かった。
生検を行った42人中36人はp53がワイルドタイプで、HPV陽性にもかかわらずp53に変異を起こしていたのは1人だけだった。p53の発現レベルが低くBcl-xLの発現レベルが高い腫瘍も全生存率と疾病特異的生存率が悪かった。
研究グループは、「症例数が少ないものの、EGFRが低くHPV抗体価の高い患者が最も治療に反応しやすいと考えられる。それ以外のタイプの患者には、禁煙を含めて別の対策と治療法が必要になりそうだ」と結論している。
(大西 淳子=医学ライター)
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2008年05月15日
PSAによる前立腺がん検診が死亡率を半減
前立腺特異抗原(PSA)を用いた前立腺がん検診の普及により、前立腺がんによる死亡率が減少するという論文が発表された。これまでPSA検診と死亡率に関する研究成果がなかったことから、PSA検診の有用性を巡って国内外で議論が高まっていた。この論文は、これまでの議論に終止符を打つための有力な論拠となりそうだ。
今回発表されたのは、オーストリアにおけるPSA検診の普及と死亡率を解析したもの。成果はBJU International誌の6月号に掲載された。
オーストリアでは、Tyrol州のみが1993年より45歳から75歳の男性を対象にPSA検診を無料で提供している。これまでに、同州の住民の約87%が最低でも1回のPSA検診を受けている。Tyrol州の前立腺がんによる死亡率減少効果は毎年7.3%であり、無料検診開始前と比較すると54%もの減少を示した。
一方、Tyrol州以外の地域でも前立腺がんによる死亡率は、年々減少傾向を示しており、その減少は毎年3.2%となっている。また、同じ時期の減少率は29%となっていた。
すなわち、PSA検診の普及により、約2倍の死亡率減少効果が示されたことになる。
(小板橋律子)
関連記事
PSA検診のあり方を巡って厚労省と泌尿器科学会が対立
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2008年05月08日
子宮内膜症の卵巣がん化を調べる大規模調査が進行中
子宮内膜症により生じるチョコレート嚢胞の一部(1%弱程度)は、卵巣がん化するといわれている。そのため、日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会は、昨年4月から、子宮内膜症からの卵巣がんの発生と、何らかの治療によるがん化の予防効果を調べる大規模調査を開始した。
子宮内膜症とは子宮以外の場所で子宮内膜が生育する疾患だ。現在、月経を有する女性の約1割が子宮内膜症を持っているといわれている。子宮内膜症が卵巣に生じると、血液に由来するチョコレート状の液体が溜まった嚢胞(チョコレート嚢胞)となる。
子宮内膜症と卵巣がんの関係を示したのは、奈良県立医科大学産婦人科学教授の小林浩氏らだ。小林氏らは、静岡県内で20年以上にわたって卵巣がん検診試験を行い、チョコレート嚢胞を有する患者の0.72%に卵巣がんが発生することを明らかにしている。小林氏によると、海外の同様な研究では、約1%のチョコレート嚢胞が卵巣がん化したというデータもあるという。そのため、「ほぼ1%程度はがん化すると考えていいだろう」と小林氏。「一般的に、卵巣がんが5000人から1万人に1人の割合で発生することから考えても、チョコレート嚢胞からの卵巣がん発生率は高い」(小林氏)のだ。
今回の調査委員会の委員ともなっている小林氏は、「どのようなチョコレート嚢胞が実際にがん化するのか、その詳細を調べ、各患者の状態に合わせた最適な治療法を見出したい」と語る。
今回の調査には、全国70の医療施設が参加する予定だ。これまでのところ、70施設中40施設において、倫理委員会の承認が得られている。また、既に患者登録を開始している施設は7施設だ。
この調査は、4年間をかけて患者の登録を行い、その後、10年間にわたり卵巣がんの発生頻度を追跡調査する。調査においては、嚢胞の摘出術を選んだ患者群と、経過観察のみの患者群、また、内膜症による月経困難症に有効な低用量ピルなどの薬物投与を受けた患者群を分け、がん化の発生率に差があるかも調べる。
(小板橋律子)
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2008年05月01日
定期的な子宮頸がん検診が早期発見に有効
推奨される間隔で子宮頸がん検診を受けない場合、進行がんとして発見される危険性が高まることが確認された。スウェーデンGavle Hospitalなどによる全国規模の調査によるもの。成果は、Journal of the National Cancer Instituteのオンライン版に4月29日に公開された。
同調査は、スウェーデン国内で、1999年1月1日から2001年12月31日までに浸潤性の子宮頸がんと診断された全ての患者1230人に対して行われた。
その結果、推奨される間隔で子宮頸がん検診(細胞診による)を受けていない場合には、推奨される間隔で検診を受けていた場合に比べて、子宮頸がんが発見されるリスクが2.52倍(95%信頼区間2.19-2.91)に高まることが確認された。
また、推奨される間隔で子宮頸がん検診(細胞診による)を受けていない場合には、進行した状態の子宮頸がんが発見されるリスクも4.82倍(95%信頼区間 3.61-6.44)と高まっていた。
がん検診は、一度受ければいいというものではなく、定期的に受けることが重要といわれている。今回の結果から、子宮頸がん検診を定期的に受診することが、早期発見、早期治療につながることが示されたといえる。
(小板橋 律子)
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2008年04月25日
米国がん協会が2008年版年次報告書を公表
米国がん協会(ACS)は4月22日に、年次報告書(Cancer Prevention & Early Detection Facts & Figures 2008;CPED)を発表した。同協会は1992年から毎年、がんのリスクに影響を及ぼす要因について総合的に分析したリポートを公表している。2008年版では、がんによる死亡率を減らすための米国の努力は長期にわたって成果を上げてきたが、ここにきて喫煙率の低下が進まなくなり、マンモグラフィ受診率は横ばいまたはわずかに減少、大腸がんのスクリーニングを受ける頻度は上昇するも好ましいレベルには達していない、といった問題点を指摘している。
米国では1990年代にがんの死亡率が低下し始めた。それ以来今日までに、死亡率は、男性では18.4%、女性は10.5%下がった。これは50万人を超える人々ががん死を免れたことを意味する。引き続きがん死を減らしていくためには、喫煙者、肥満者を減らし、がん検診受診率の上昇を実現する包括的かつ系統的な努力が必要だ。
今回は、医療を受ける機会の重要性にも触れている。医療保険に加入している人に比べ保険が無い人々は、がん検診を受ける頻度が低い。また、がんが進行してから発見されることが多く、早期発見された場合に比べ治療費は高額になり、生存率は低下するという。
以下は今年焦点が当てられた話題だ。
●喫煙
・成人の20.8%、高校生の23%が現在喫煙している。高校生の喫煙率は1997~2003年の減少後、2003~2005年には横ばいになった。
・1997~2004年には男女共に喫煙率が減少したが、過去2年間は減少が止まり、2006年のままとなっている(男性23.9%、女性18.0%)。
・タバコ1箱当たりの物品税は1ドル未満の州が25州ある。税金の安い州は主に米国南東部と中央部に集中している。
・43州とコロンビア特別区が2000年以降にたばこ税を引き上げたが、たばこ税の一部を州民の健康と対がん政策、喫煙対策に投入すると規定した法律を持っているのは23州のみ。
・2008年には米国内の州が喫煙対策に割り当てた金額は総額7億1720万ドル。しかし、禁煙対策に公的資金から1ドルが投入される間に、タバコ業界は24ドルを宣伝に費やしている。
●早期発見
・40歳以上で過去1年間にマンモグラフィを受けた女性は51.2%に留まった。ACSは40歳以上の女性は毎年検査を受けることを推奨している。
・マンモグラフィ受診率は過去10年間増加してきたが、ここに来て横ばいまたはわずかに減少している。2005年の調査で、過去2年間に検査を受けたと答えた女性は66.5%だったが、2000年に比べると4%低下していた。
・マンモグラフィ受診率が最低だったのは医療保険のない女性だった。2番目が移民で、米国に住んで10年未満の女性だった。
・大腸がんのスクリーニングを受ける人は増えているが、他のがん検診の受診率と比べるといまだに低い。米国内の50歳以上の成人で大腸がん検診を受けた人の割合は2000年が42.5%、2005年は46.8%だった。
・大腸がん検診の受診率が最も低かったのは、ヒスパニック、米国に居住を始めてから10年未満の移民、無保険者だった。
●肥満と過体重
・米国の成人の約3/2は過体重または肥満だ。肥満者の増加は2003年~2004年と2005年~2006年には止まったように見えた。2005年~2006年の肥満者は男性の34%、女性の36.4%だった。
・過去20年間に、米国の12~19歳の青少年に占める過体重者の割合は5%から17.1%に増加。増加は人種、民族、性別にかかわらず見られた。
・2006年の米国各州の肥満者の割合は、最低がコロラド州の18.3%、最高がミシシッピ州の31.5%だった。
●栄養と運動
・2005年に、米国の若者の35.8%が、60分以上の運動を週5日以上行っていた。体育の授業が毎日ある生徒が33%いた。
・2005年に米国の高校生の37.2%が1日に3時間以上TVを見ると答えた。
・2005年には高校生の5人に1人(20.1%)が野菜/果物を1日に5回以上食べていた。
・2005年に成人で同様の頻度で野菜/果物を食べていたのは24.3%。州ごとに比べると、その頻度はオクラホマ州が最低(15.7%)で、コロンビア特別区が最高(32.2%)だった。
・2006年には余暇に運動をしていないと答えた成人が全体の23.9%を占めた。州別では、最低がミネソタ州の14.2%、最高がミシシッピ州の31.2%。
●紫外線対策
・68.7%の若者が夏の間に日焼けをしたと答えた。日焼けは紫外線に対する感受性が最も高いタイプの皮膚を持つ若者(84.5%)と少女(71.5%)に多かった。
・2004年の調査で、11~18歳の青少年の約1/3が、夏の間は常に、または、しばしば日焼け止めを使用していた。しかし、常に、または、しばしば日陰を探すと答えた青少年は20%にとどまった。長袖の服や長ズボンの着用など、衣服による紫外線カットを常に行っていた人は10%にすぎなかった。
・2005年の成人を対象とする調査では、28.3%が常に、または、しばしば日焼け止めを用いると答えた。夏に屋外に1時間以上とどまる場合には日陰を探すと答えた人は43.4%だった。
ACSによると、報告書の公開時点で、29州とコロンビア特別区、プエルトリコが、段階的な喫煙禁止(職場、レストラン、バーなどでの喫煙を禁止)を立法化または実施していた。2791の自治体も何らかの禁煙法案を承認。大腸がんの検診についても、メディケアと民間医療保険の適用拡大により、受診率が増加しているという。こうした多面的な努力が、米国民の全てに利益をもたらし、がん死を引き続き減らすために必要だ。
(大西 淳子=医学ライター)
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2008年04月04日
複数の遺伝子情報で乳がん再発の予測精度を上げる試み
複数の遺伝子情報を活用することで、早期乳がんの再発リスク予測がより正確に行える可能性が示された。これは米Duke大学の研究者らの成果。4月2日号のJAMA誌に掲載された。
既に米国では、乳がん術後の再発リスクを、コンピューターによるシミュレーション「Adjuvant!Online」を用いて予測することが一般化している。「Adjuvant!Online」によるシミュレーション計算は、しこりの大きさや発症時の年齢、ホルモン感受性の有無などの情報を元に推計されている。
今回の成果は、573人の早期乳がん患者の遺伝子発現情報を用いて、乳がんの再発リスクに関連する遺伝子群を解析し、その情報を「Adjuvant!Online」に加えることで、再発予測の精度を高めようというもの。今後、さらなる検討が必要ではあるが、新しい方向性を示すものとして注目されそうだ。
京都大学医学部附属病院乳腺外科教授の戸井雅和氏は、「『Adjuvant!Online』は、まだ初期的なシミュレーション。将棋ソフトに例えればアマチュアの段階。今回の成果が加わることで、精度が一段階高まる可能性がある」と解説する。
戸井氏らも、今回の研究とは異なる視点から、日本人を対象に「Adjuvant!Online」の改良版開発を行っているという。日本人のデータを元に、より精度の高い再発リスク予測が可能になれば、個々の乳がん患者に適した、過不足のない術後薬物療法が選択できるようになると期待される。
(小板橋 律子)
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2008年03月25日
骨髄由来の血管内皮前駆細胞はベバシズマブのバイオマーカーとして有望
抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体ベバシズマブの効果を予測するバイオマーカーとして、骨髄由来の血管内皮前駆細胞(CEP)が有望であることが示された。一方、大腸がん化学療法の効果予測には、末梢血中に含まれる末梢循環大腸がん細胞(CTC)が有用という。癌研究会有明病院化学療法科の松阪諭氏らが、第6回日本臨床腫瘍学会学術総会(福岡、3月20~21日)で発表した。
化学療法の効果を予測するバイオマーカーとしては、これまでに末梢循環大腸がん細胞(CTC: circulating tumor cell)や、末梢循環血管内皮細胞(CEC: circulating endothelial cell)、骨髄由来の血管内皮前駆細胞(CEP: circulating endothelial progenitor)が有用であるとの報告がある。
研究グループは、進行大腸がんの標準療法であるFOLFOX4による化学療法を受けた患者30人、FOLFIRIによる化学療法を受けた患者13人、FOLFOX4にベバシズマブを追加した患者21人において、CTC、CEC、CEPの変化を分析し、治療効果との関連性を調べた。
その結果、FOLFOX4あるいはFOLFIRIによる化学療法を受けた患者のうち、効果判定が部分奏功(PR)あるいは安定状態(SD)だった患者では、末梢血7.5mL中のCTC数は2週目以降、減少したが、進行(PD)の患者では増加する傾向が見られた。また無増悪生存期間は、8~12週目のCTC数が3未満の患者のほうが、3以上の患者に比べて、有意に長いことが示された(p=0.0048)。全生存率も、2週間目のCTC数が3未満のほうが、3以上の患者よりも高かった(p=0.054)。
続いて、FOLFOX4にベバシズマブを追加した患者において、CEP量を分析したところ、PRあるいはSDと判定された患者は、PDの患者よりも、2週目以降、CEP量が高い傾向が見られた。一方、FOLFOX4投与群とFOLFOX4+ベバシズマブ群において、CECの数に有意な違いは認められなかった。
これらのことから、研究グループは、「大腸がん化学療法にはCTCが、ベバシズマブではCEPが効果を予測する診断法として有用である」と結論付けた。
(八倉巻 尚子=医学ライター)
※ 「がんナビ通信」
2008年03月25日
EGFR変異をもつ全身状態不良の非小細胞肺がんにはゲフィチニブが有効
化学療法の適応ではないとされている全身状態(Performance status;PS)不良の非小細胞肺がんでも、EGFR遺伝子変異を持つ場合、ゲフィチニブが高奏功することが、北東日本ゲフィチニブ研究グループによる多施設共同フェーズ2試験から確認された。宮城県立がんセンター呼吸器科主任医長の前門戸任氏らが、3月20日から福岡市で開催された第6回日本臨床腫瘍学会学術総会プレナリーセッションで発表した。
現在の日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」では、PS不良の非小細胞肺がんの場合は化学療法の適応ではないとされている。多くの患者はbest supportive careが選択され、予後も3~4カ月。分子生物学的マーカー(EGFR遺伝子変異)によってゲフィチニブを投与する患者を選択し、有用性を示した報告は国内外で初めて。
試験対象は、ゲフィチニブに感受性があると予想されるEGFR変異(exon19deletions、L858R、L861Q、G719A、G719C、G719S)を持ち、非感受性のEGFR変異であるT790Mを持たない非小細胞肺がん患者。対象の選択には、同研究グループが開発した、簡便にEGFR遺伝子変異を検索できるPNA-LNA PCR clamp法を用いた。加えて、肺がんによるPS悪化(20~75歳未満ではPS3以上、75歳以上ではPS2以上)で化学療法の適応にならず、予測予後が4カ月以下と推測される患者29人を対象とした。うち女性は22人、年齢中央値72歳(範囲50~84)だった。29人のうち、腺がんは27人、病期Ⅳが27人、PS3~4が22人だった。
対象となった29人にゲフィチニブ250mg/body/dayを経口連日投与したところ、プライマリーエンドポイントである奏効率は62%(95%信頼区間 44-80%)、1年生存率は73%だった。また全生存期間の中央値は17.8カ月であり、無増悪生存期間の中央値は9.3カ月(同 5.2-11.0カ月)となった。PS3-4からPS1-2と、臨床的に意味あるPS改善をした人は22人中15人(PS改善率65%)だった。
一方で、EGFR遺伝子変異があってもゲフィチニブが効かない人もおり、本試験でも2人は病状が進行してしまった。
有害事象については、グレード2以下の軽微なものがほとんどだったが、1人はグレード4の肺炎を発症した。
さらに、EGFR変異の有無による生命予後の差を比較すると、EGFR陰性だった31人の全生存期間の中央値は3.5カ月であり、陽性者でゲフィチニブを投与した群の17.8カ月と比べ、非常に低かった。
前門戸氏は、「初回ゲフィチニブ療法はかつてないほど良好な成績を出した。PS不良の非小細胞肺がんでEGFR遺伝子変異が陽性の場合、ゲフィチニブの投与が勧められるだろう」と結論づけた。
コメンテーターの北大大学院腫瘍内科学教授の秋田弘俊氏は、「本試験からは、ゲフィチニブによるPS改善効果は明らかだった。PSは予後因子であることから、ゲフィチニブ治療による予後改善、生存期間延長は明らかだろう。ただし、今後、今回のフェーズ2試験の結果を基にフェーズ3試験を行うとなると、コントロール群がBSCになってしまうため、倫理的に難しいのかもしれない」と話した。
(末田 聡美)
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2008年03月18日
家族性乳がんの発症にかかわる遺伝子が新たに発見
およそ5~10%の乳がん患者には乳がんの家族歴があることが知られている。これは、遺伝的な要素、具体的にはBRCA1やBRCA2遺伝子の変異が家族性乳がんに関わっており、この2つの遺伝子変異は家族性乳がんのおよそ25%に関与している。では、残りの75%はどのような遺伝的要因が関わっているのか。
ドイツのFamilial Breast and Ovarian Cancersコンソーシアムのグループは、AKAPファミリーという遺伝子群のうち、6つの遺伝子バリアントについて解析した結果、2つの遺伝子バリアントはAKAP9遺伝子由来で、乳がんのリスクを増加させることに関連していることを明らかにした。結果は、Journal of the National Cancer institute誌vol.100 page1;2008に掲載される。遺伝子バリアントとは、1つの遺伝子から複数のたんぱく質が生合成される場合の各々のたんぱく質を指す。
この2つの遺伝子バリアントは常に一緒に遺伝するため、この2つのうちどちらか、あるいは両方がリスクに影響するかを解析する必要があるが、BRCA遺伝子とは違う家族性発症にかかわる遺伝子がまた1つ見出されたといえそうだ。AKAP遺伝子ファミリーは、細胞内でシグナル伝達にかかわる因子として知られている。
この研究は、9523例の乳がん患者(そのうち2795例は家族性乳がん)と1万4000の乳がん患者ではない女性を対象に行われたもので、ドイツ、英国、米国、オーストラリアの研究者が参加した。
AKAP9遺伝子に由来する2つの遺伝子バリアントを持つ場合、乳がんを発症するリスクは17%高まることが明らかになった。乳がんの家族歴を持つ女性では2つの遺伝子バリアントの寄与は高まり、発症するリスクは27%高まった。AKAP9遺伝子の遺伝子バリアントのうち1つだけを保有する場合は、乳がん発症リスクは8%、乳がんの家族歴を持つ場合は12%に下がることも明らかとなった。
これらの結果により、AKAP9遺伝子の遺伝子バリアントはBRCA遺伝子の変異と比べ、乳がんのリスクへの寄与は少ないといえる。ただし、このAKAP9遺伝子バリアントは、より頻度の高いもの。この2つの遺伝子バリアントは肺がん、大腸がん発症リスクにも関わっていることが知られており、今後、どれくらい細胞内のシグナル伝達に関わり、乳がん発症に寄与するかさらに詳細に解析する必要がある。
(加藤 勇治)
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2008年02月14日
乳がん遺伝子BRCA1とBRCA2のいずれに変異を有するかにより予防的卵巣摘出術の利益は異なる
BRCA1またはBRCA2の変異を持つ女性においては、卵巣摘出はがんリスクを減らす方法の一つとして広く受け入れられている。米Memorial Sloan-Ketteringがんセンターの研究者たちは、どちらの遺伝子に変異を持つかによって、この外科的予防法の利益は異なることを初めて明らかにした。詳細はClinical Oncology誌電子版に2008年2月11日に報告された。本誌掲載は2008年3月号になる予定。
乳がん遺伝子に変異を持つ女性に対するRisk-Reducing Salpingo-Oophorectomy(RRSO:リスク低減のための卵管卵巣摘出術)の効果を調べたこれまでの研究は、これらの変異を持つ女性を区別せずに、またはBRCA1変異保有者のみを対象に行われていた。
BRCA2変異保有者に対するRRSOの影響と、BRCA1変異保有者に対する影響を別々に調べた研究は今回が初めてで、得られた結果は、どちらの変異を持つかによってがん予防効果が異なることを示唆した。
対象となったのは、これら乳がん遺伝子のいずれかに変異がある30歳以上の女性。RRSOまたは観察のいずれかを本人が選択した。質問票を用いた調査と医療記録を基に、前向きに3年間追跡。
RRSOを受けた509人の女性と、これを受けずに観察を選んだ女性283人を比較したところ、RRSOはBRCA2グループの乳がんリスクを72%低減(ハザード比0.28、95%信頼区間0.08-0.92)していた。BRCA1グループでは統計学的に有意な結果にはならなかったが、リスクの減少がうかがわれた(ハザード比0.61、0.30-1.22)。
一方、婦人科がんのリスクはBRCA1グループで85%減少(ハザード比0.15、0.04-0.56)。BRCA2グループでもリスク低減が示唆されたが、グループ内の婦人科がん罹患率が低すぎて低減幅を推定できなかった。
さらに分析を進めたところ、RRSOは、BRCA1またはBRCA2の変異を持つ女性のエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんを78%減らすことが明らかになった。しかし、ER陰性乳がんの罹患率には影響が見られなかった。
BRCA1変異は特にER陰性乳がんリスクを増すことが知られている。従って、BRCA1変異保有者は、RRSOに加えて、乳がんリスク低減策(MRIによるスクリーニングの頻度を上げる、予防的乳房切除など)を用いる必要があるのではないか、と著者らは述べている。
(大西 淳子=医学ライター)
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2008年02月14日
赤血球関連遺伝子群で骨髄異形成症候群におけるレナリドミドの有効性を予測
骨髄異形成症候群の治療薬であるレナリドミドの有効性は、赤血球の分化に関わる遺伝子群により予測可能であることが明らかになった。この結果は、PLoS Medicine2月12日号に発表された。
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞の異常による血球減少ならびに血球形態の異常を生じる疾患で、高率に急性白血病に移行する。
5q欠損の染色体異常を伴う骨髄異形成症候群に対しては、サリドマイド誘導体のレナリドミド(lenalidomide)が有効であることが既に報告されている。しかし患者の大半が5q欠損はなく、5q欠損のない患者でレナリドミドが有効なのは約25%にすぎないといわれている。
そこでレナリドミドの有効性を予測する方法を調べるため、Massachusetts大学などの研究グループは、5q欠損がないレナリドミド有効例と無効例において、遺伝子発現プロファイルにより、遺伝子特性(signature)を比較した。
その結果、レナリドミドの有効例では、無効例に比べて、赤血球の分化に関連する遺伝子群の発現が減少していることが確認された。つまり、赤血球の分化に関わるsignatureを調べることにより、レナリドミドの有効性を予測することが可能であることを示している。
またヒト造血前駆細胞を使ったin vitroの実験から、レナリドミドにより、赤血球生成が促進されることも確認された。このため研究グループは、「骨髄異形成症候群におけるレナリドミドの作用機序は明らかでないが、レナリドミドによる治療効果は、赤血球の分化を促進し、異常な細胞のアポトーシスを誘導することによるものではないか」としている。
(八倉巻 尚子=医学ライター)
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2008年02月08日
子宮頸がん発症リスクの高いHPVを検出する遺伝子検査薬が年内に発売へ
ロシュ・ダイアグノスティックスは、子宮頸がんとの関連が指摘されているパピローマウイルス(HPV)の遺伝子検査薬を年内に発売する予定であることを明らかにした。HPVのうち発がんのリスクが高いとされている十数種類の遺伝子を検査するスクリーニング用のキットになる。ただし、健康保険が利用できるようにするための試験は現在進行中で、終了まで2年間程度かかるとしており、保険が利用できるのはまだかなり先になる可能性が高い。
HPVの遺伝子検査は、現在、先進医療の枠組みで実施されている。1月に開催された会議で厚生労働省は、HPV遺伝子検査の保険適用について、検査薬が治験中のため保険適用を見送るという判断をした。このままでは当分保険で利用できる検査にはならないことになるが、若年者のHPV感染率が向上し、子宮頸がん検診の受診率が極めて低いわが国の現状を考えると、できるだけ早期の保険適用が必要だ。
(横山 勇生)
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2008年02月04日
MMP9がタルセバとセレブレックスの併用で効果が得られる肺がん症例を判定するバイオマーカーの可能性
米University of California LA(UCLA)Jonsson Cancer Centerのグループが、進行性非小細胞肺がん患者のうち、抗炎症薬セレブレックスと上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬タルセバの併用治療に反応するかどうかを予測できる可能性があるバイオマーカーを見出した。成果の詳細は、Journal of Thoracic Oncology誌2月1日号に掲載された。
同グループは、進行性肺がん患者を対象に、セレブレックスとタルセバを併用した臨床試験を行い、50%の患者で腫瘍が30%以上縮小したか腫瘍が増殖しないという結果が得られたが、残りの50%では治療効果が得らないという結果だった。
この効果の違いの原因を明らかにするため、患者に由来するがん細胞、血液、尿を分析した。その結果、タルセバとセレブレックスの併用療法に反応しない患者の血液から、あるたんぱく質が高発現していることを見出した。併用療法に反応する患者では減少していた。
詳しくは、治療前の段階で血中にMMP9というたんぱく質量が少ない場合、セレブレックスとタルセバの併用療法によく反応することが明らかとなった。この結果がより大規模な臨床試験でも確認されれば、血中のMMP9量が低い患者では、セレブレックスとタルセバの併用療法とその効果が期待できるといえる。この結果を受けて、現在、100人の患者を対象としたフェーズII臨床試験が進められている。
一般に、80~85%の肺がんにおいて、炎症に関与するシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が過剰発現していることが知られている。また、COX-2は、がん細胞がタルセバのような上皮成長因子受容体阻害薬に対する抵抗性を獲得することに寄与していると考えられている。また、15%の肺がん患者しかタルセバによる効果が得られないが、その場合でもいずれ抵抗性を獲得してしまう。一方、研究者らは、COX-2阻害薬を投与することで、タルセバ抵抗性が感受性に戻ることを実験で見出している。
(加藤 勇治)
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2008年01月21日
遺伝的変異と家族歴が前立腺がんの発症に関与
染色体上の5つの一塩基多型(SNP)と家族歴が、前立腺がんの発症に関わっている可能性の高いことがスウェーデン人を対象とした研究で明らかになった。この結果はNew England Journal of Medicine電子版に発表された。
研究では、前立腺がんに関与すると考えられている染色体8q24の3領域および17q12と17q24.3の全5領域から16の一塩基多型(SNP)を選択し、スウェーデンの前立腺がん患者2893人および対照群として1781人において、前立腺がんとの関連性を調べた。
その結果、5つの領域のSNPはいずれも患者群と対照群において遺伝子頻度に有意な違いが見られた。また5つの領域にある5つのSNP(17q12のrs4430796、17q24.3のrs1859962、8q24のrs16901979、rs6983267、rs1447295)において、オッズ比から人口寄与危険度(PAR)を求めたところ、PAR は3.58~22.17%であり、これら5つを合わせたPARは40.45%、さらに5つのSNPに家族歴を加えたPARは46.34%になった。
5つのSNPおよび家族歴のうち、5つ以上の因子を持っている場合の前立腺がんリスクは、いずれも持っていない場合に比べて9.46倍(95%信頼区間 3.62-24.72、p=1.29×10-8)、4つの因子では4.76倍(同3.31-6.84、p=9.17×10-19)だった。
また5つのSNPは、病気の侵襲性やPSAレベルとは独立した因子であることが確認されたことから、研究グループは「前立腺がんに関与した遺伝的変異がある場合、PSA値が低くても、前立腺がんを発症するリスクは高くなる可能性がある」としている。
さらに研究グループは「SNPが前立腺がんのリスクに影響を及ぼすメカニズムは不明」だが、「遺伝的変異はがん化の初期段階に作用しているのではないか」としている。
(八倉巻 尚子=医学ライター)
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2008年01月11日
BRCA1、BRCA2キャリアの間でも乳がんリスクに差
BRCA1とBRCA2は乳がんリスクを高める遺伝的変異だ。これらの変異がもたらすリスクについて調べた研究は多いが、個々の変異保有者(キャリア)のリスクレベルの差に関心が向けられることはほとんど無かった。米Memorial Sloan-KetteringがんセンターのColin B. Begg氏らは、BRCA変異を持つ乳がん患者の1親等の女性の乳がん発症について調べて、他の要因がリスクの高低に影響を与えることを示唆した。詳細はJAMA誌2008年1月9/16日号に報告された
研究者たちは、Women's Environmental Cancer and Radiation Epidemiology (WECARE)研究の被験者の1親等の親族に注目した。
集団ベースのケースコントロールであるWECAREは、初めての乳がん診断が55歳未満で、1985年1月-2000年12月の間患者だった人のなかから、1年以上たって対側にも乳がんが発生した女性(ケース)と、乳がんが初発の片側だけに留まったマッチドコントロールを選んで行われた研究だ。今回は、それら被験者のBRCA1、BRCA2遺伝子の変異について調べ、さらに電話で接触して、1親等の女性の乳がん発症の有無を尋ねた。
WECAREのコントロール(片側乳がん患者)1394人のうち73人(5.3%)が有害な変異を持っていた(42人がBRCA1、31人がBRCA2の変異)。ケース(対側も乳がんとなった女性)704人ではその数は108人(15.3%)だった(67人がBRCA1、41人がBRCA2の変異)。
これら2098人の患者の1親等の親族のうち1565人(全体の75%)は乳がんを発症していなかった。BRCA1キャリアの親族では42%、BRCA2キャリアの親族でも42%が乳がんを発症していた。
やはりキャリア親族の乳がんリスクは非キャリアの親族より有意に高かった。BRCA1キャリアの親族では2.4倍、BRCA2キャリアの親族では2.6倍だった。
キャリア親族の乳がんリスクとの関係が有意だったのは、WECARE被験者となった患者の乳がん発症年齢だった。45-54歳で発症した患者に比べ、35歳未満で発症した患者の親族の乳がんリスクは2.2倍だった(P=0.04)
また、片側乳がん患者の親族より、対側にも乳がんが見つかった患者の親族のほうがリスクは高い傾向が見られた(オッズ比1.4、P=0.28)。
さらにBRCA1キャリアについてみれば、同じ1親等でも、患者の母親の乳がんリスクを1とすると、娘のリスクは4.6倍だった(P=0.03)。
今回は、BRCA1、BRCA2の変異の有無が判明している患者の1親等の女性(キャリアかどうかは不明)のリスクを調べた研究で、遺伝的変異以外の危険因子の乳がんリスクに対する影響を直接評価したわけではない。しかし、変異以外にもリスクを上下させる要因があることは示された。
BRCA1、BRCA2スクリーングにより陽性と判定された女性に対する予防的な措置について判断を下す場合には、変異以外の危険因子も含めて、本人のリスクを正確に推算することが必要だ。リスク評価が詳細に行えるようになれば、テイラーメードの予防策適用が可能になるだろう。
(大西 淳子=医学ライター)
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2008年01月09日
BRCA1/2遺伝子変異有りでは変異無しに比べて卵巣がんの治療効果が高い可能性
卵巣がん発症リスクとして知られているBRCA1/2遺伝子変異を持つ場合、遺伝子変異を持たない場合に比べて、治療成績が良い傾向が明らかになった。この傾向は、進行度が高く、病理学的悪性度が悪いほど強かったという。
これは、イスラエルの研究グループが、ユダヤ人を対象に行った研究の結果。BRCA1/2遺伝子の変異は、家族性卵巣がんのみでなく家族性乳がんの危険因子としても知られる。そのため、同遺伝子変異はネガティブにとらえられやすいが、今回の成果から、遺伝子変異の有無が、最適な治療法の選択につながる可能性が示唆されたといえる。
今回の研究は、1994年~1999年の間にイスラエルで行われたケースコントロール研究に参加した卵巣がん患者を、2003年まで追跡調査した結果。605人のアッシュケナージ系ユダヤ人の女性を対象にしており、そのうち35.2%の213人がBRCA1/2遺伝子に変異を有していた。
その結果、全体の5年生存率は39%であった。中間生存期間は、遺伝子変異を持つ場合は53.7カ月と、遺伝子変異を有しない場合の37.9カ月に比べて有意に長かった。また、ステージ3、4の患者、病理学的悪性度が悪い場合に、この傾向はより強かった。
すなわち、アッシュケナージ系ユダヤ人において、遺伝子変異を有する場合の方が生存期間が長いということになる。その理由として、研究グループは、変異の有無により子宮がんの性質が異なること。変異を有する場合に、化学療法への反応性が高いことが影響している可能性があるとしている。
(小板橋 律子)
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<研究所紹介>
国立がんセンター研究所
所在地:〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
電話 03-3542-2511(代表)
FAX 03-3545-3567
<研究所の特徴>
研究所は我が国におけるがん研究を推進する中核的がん研究施設として活動している。研究所は築地の14部と4省令研究室に、1993年に柏キャンパスに設立された研究所支所の4部を加えた18部と4省令研究室で構成され、126名の研究スタッフ、40名の研究補助員、約100名のリサーチレジデント、そして研修生が研究に従事している。病院との密接な連携の基に基礎研究および応用研究の分野で幅広い研究活動を行っている。研究目的は発がんの基本的メカニズムを解明すること、そこで得られた知識を、予防、診断、治療を含めたがん対策に活用することである。主な研究分野は以下のように分類できる。
- ヒトがんの疫学研究および病理学的研究
- 化学発がん、ウイルス発がんの研究
- ヒトがんの分子遺伝学的研究
- がんの新しい診断、治療、予防法に関する開発研究
<プロテオミクスによるバイオマーカーの発見>
高感度の質量分析機を用いたプロテオミクス(PDF:27KB)解析により血液やがん組織のタンパク質の発現量や翻訳後修飾の変化から、がんの早期診断や治療の奏功性や副作用を予測するバイオマーカー(PDF:53KB)を開発している。
国立がんセンター研究所化学療法部では、大きく分けて下記の2つの解析方法(PDF:29KB)を用いている。
●ダイレクトプロテオミクス(本田チーム)
酵素消化することなしに、高分解能の質量分析機でタンパク質の質量を直接計測する方法(1)。全自動前処理ロボットと解析範囲の広いMALDI-OTOF-MS (matrix-assisted laser desorption/ionization orthogonal
time-of-flight mass spectrometry)型の質量分析装置により定量再現性とスループットの高い解析を可能にしている。
●ショットガンプロテオミクス(PDF:74KB)(尾野チーム)
タンパク質を酵素消化し、物理化学的な性状が均一なペプチドとして解析するため、網羅性が高い。国立がんセンターでは同位体標識なしに正確な定量解析が可能なショットガンプロテオミクス手法として2DICAL(PDF:286KB)(2-Dimensional Image Converted Analysis of LCMS [Liquid chromatography
and mass spectrometry])法を開発した(国際特許出願中)(2)。
●がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発
(厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業)
現在までに血漿・血清タンパク質のプロテオーム解析にて膵がん(3)、腎細胞がん(4)、子宮体がん( 5)の診断マーカーを同定した。
第3次がん総合戦略事業「がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発」の研究班(PDF:31KB)では全国の7つの医療機関の共同研究にて膵がん、胃がん、大腸がん、肝細胞がんなどの患者様、鑑別疾患の対象となる良性疾患の方、および健常な方より血漿・血清検体を提供いただき、統計学的に十分な検体数での検証を目指して研究を行っている。
本研究班は国際がんバイオマーカーコンソーシアム(International Cancer Biomarker Consortium [ICBC])へ唯一の日本チームとして参加し、海外の研究機関と情報交換している。
●がんの病態把握と個別化治療実現に関する研究
(独立行政法人医薬基盤研究所「医療保健分野における基礎研究推進事業」)
レーザーマイクロダイゼクションで抽出した微小検体でも、大規模なタンパク質の定量解析可能である。2DICAL法を用いればホルマリン固定パラフィン切片の膨大なアーカイブが使用できるため、がんの個性診断と個別化治療実現を目指して、治療奏効性・副作用の予測、再発・予後予測に有用なバイオマーカーを探索している。
●糖鎖腫瘍マーカーの開発
(METI・NEDO委託事業 糖鎖機能活用技術開発プロジェクト)
2DICAL法の翻訳後修飾解析機能を応用し、癌における糖タンパク質の糖鎖構造変化を利用した卵巣癌や子宮体などの新規バイオマーカーを開発している。
●膵がんの血漿診断法の実用化に関する研究
(独立行政法人医薬基盤研究所「医療保健分野における基礎研究推進事業」)
血漿プロテオーム解析による膵がんの新規診断法(国際特許出願中)(3,6,12)を臨床検査やがん検診に実用化するために、民間企業と共同研究を行っている。
参考論文
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