パーソナルツール
現在の場所: ホーム バイオマーカー・トピックス(ニューズレター) バイオマーカー・トピックス(No27.2008年9月18日)

バイオマーカー・トピックス(No27.2008年9月18日)

 



 

バイオマーカーの探索・発見・適応への関心が内外で急速に高まってきています。トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等のポストゲノミクス研究の急速な進歩と実用化、テーラーメイド医療の進展、癌などの各種疾病の早期発見・診断への関心の高まりなどを背景に、それに寄与できるバイオマーカーが注目されてきているからです。

「バイオマーカー・トピックス」は内外で発信される数多くのニュースや雑誌記事、論文などから適宜選んで、その要約やポイントを日本語で紹介するものです。

皆様の研究活動やビジネスに少しでも役立てばと願っています。

なお、翻訳はサイリックが担当しており、専門用語などは的確でない場合もあることをご容赦ください。また長文の場合はサイリックの判断で一部のみを紹介しています。正確なことは直接原典で確認してください。(多田 丞)

 

<皆様からも情報提供をお願いします。次のメールアドレスにお願いします。>

tada@sciric.com

 

                          <目 次>

・米クアンテリックス社、単一分子アレイ技術がこれから分子診断の有力なツールとなる、と主張.. 1

・長崎大学とバイエル・シエーリング・ファーマ社、アルツハイマー病の画像診断薬開発でライセンス契約   2

・英テラジェネティクス社、キングスカレッジロンドンのアルツハイマー病薬に関するPGx研究で提携   3

・アルツハイマー病、診断薬の候補物質、京大、病変を素早く察知。. 3

・アークレイ、塩基配列、80分判別、全自動の検査装置。. 4

・抗体医薬、相次ぐ新薬――次世代本命、ペプチボディ(イノベーションの潮流). 4

臨床検査受託3社、大阪で共同検査施設、翌日には報告、稼働率高く. 6

・米NIH、筋ジストロフィーの診断治療のためのバイオマーカー研究で900万ドルの助成金を決定   6

・オリンパスとジーンケア研、RNA量、正確に計測、不純物除き判定。. 7

<バイオマーカー関連の最近の論文紹介>.. 7

○再発予測バイオマーカー―多発性硬化症 診断法の開発.. 7

○癌診断治療のバイオマーカー.. 7

<セミナー>.. 9

○次世代シーケンサーが変えるバイオ研究の未来.. 9

 

 

 

(2008年9月9日)

・米クアンテリックス社、単一分子アレイ技術がこれから分子診断の有力なツールとなる、と主張

(Genome Technology Online)

米国のバイオベンチャーであるクアンテリックス(Quanterix)の単一分子アレイ(Single Molecular Array)のSiMoAプラットホームは、分子診断に適しているとみられているが、同社は既にいくつかのパートナーと協力して最初の「臨床試験」を開始している、と発表した。

クアンテリックスはマサチューセッツ・ケンブリッジにある会社で、近年急成長している活気のある企業である。同社はMITのキャンパスに歩いていける距離に本社を有しおり、周囲には大小のライフサイエンス関連企業などがある。

同社は、単一分子をカウントできる非常にセンシティブな蛋白質検知技術を開発しており、それは小さな腫瘍が血液中に放出する特有の微量蛋白質を検知することができる。

クアンテリックス技術の開発者である米タフツ大学ハワード・ヒューズ研究所のデビット・ワルト教授は「前提条件は、最もセンシティブなレベルを実現できる診断技術を獲得することである」と語っている。

同社では血液中のトレース蛋白質は、がんの他にも心臓病、アルツハイマー病、その他の病気の初期のサインを検出可能にし、将来的には非侵入性の胎児診断を可能にするかもしれない、と述べている。(以下省略)

 

(2008年9月10日)

・長崎大学とバイエル・シエーリング・ファーマ社、アルツハイマー病の画像診断薬開発でライセンス契約

国立大学法人長崎大学(長崎市、齋藤寛学長)と独バイエル・シエーリング・ファーマ社(独レバクーゼン、アンドレアス・フィビヒ社長)はこのほど、長崎大学が新たに開発した、分子イメージングのための有機化合物の使用に関するライセンス契約を締結しました。この化合物は、PET(ポジトロン放出型断層撮影)の放射性薬剤(トレーサー)として利用することで、アルツハイマー病の早期診断を実現できる可能性を持つものです。この契約に基づき、バイエル・シエーリング・ファーマ社は、この化合物を用いた放射性薬剤の開発と販売に関し、全世界における独占権を取得します。
この化合物は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科生命薬科学専攻・衛生化学研究室(中山守雄教授)が開発した、βアミロイド(脳内で病的集積し、アルツハイマー病を引き起こすと考えられているタンパク質)と特異的に結合する低分子有機化合物です。この化合物をフッ素18(18F)で標識し、PETのためのトレーサーとして使用することで、βアミロイドの沈着を極めて初期の段階で検出し、アルツハイマー病の兆候を発見できる可能性があります。
契約締結について、長崎大学の中山教授は「我々の、分子イメージング分野における研究開発を進める上で、バイエル・シエーリング・ファーマ社が強力なパートナーとなったことを、非常にうれしく思います。また今回の提携は、本学の知的資産が世界的にも高い水準にあることを示す証であると同時に、法人化以後に構築された産学官連携機構の努力の賜物と考えています。今後は、長崎大学発の化合物が、アルツハイマー病の画像診断に寄与できる分子イメージング薬剤として展開されることを期待します」とコメントしています。
また、バイエル・シエーリング・ファーマ社の診断薬事業部長、ハンス・マイヤー氏は「高い技術力を持つ長崎大学と協力できることは大きな喜びです。この契約は、分子レベルで疾患を正確に、早期に診断するために、革新的な薬剤を開発するという我々の使命を支えるとともに、アルツハイマー病診断における弊社の分子イメージング製品群強化を実現します」と説明しています。
バイエル・シエーリング・ファーマ社は、分子イメージング分野での製品開発に注力しています。もっとも開発が進んでいる製品Bay 94-9172は現在、第Ⅱ相臨床試験を開始したところです。

研究の医学的背景:

代表的な世界レベルの疫学研究によると、現在、認知症を患っている人は、世界中で約2400万人に達すると推計され、さらに毎年、新たに460万人が発症しています。認知症に苦しむ患者さんの数は、20年ごとに倍増し、2040年までにはおよそ8000万人に増加すると推測されます。 このうち、アルツハイマー病関連の患者さんは50~75%を占めます。
現在、アルツハイマー病の確定診断を生前に行うことは難しく、 信頼性の高い臨床的診断手法は複雑かつ限定的です。一方、簡便で痛みを伴わない非侵襲的イメージング技術は、臨床診断法の向上によりアルツハイマー病の判定を可能にする上、治療方針の決定においても、また、患者さん自身や家族にとっても、大きな医学的意義を持ちます。早期での診断を可能にする新技術は、特に有用なものとなります。 また、この診断法は新しい治療法の開発にも役立つと期待されます。
バイエル・シエーリング・ファーマ社における分子イメージングの取り組み

分子イメージングは、疾患の兆候を細胞または分子レベルで検出するもので、疾患の臨床的症状が現われる前に診断できる可能性を持つ手法です。この手法によって、腫瘍や中枢神経系障害等を早期に発見できるばかりでなく、より正確な診断が可能になると期待されます。バイエル・シエーリング・ファーマ社は分子イメージングの分野で、ある細胞構造に対し、高い選択性で結合する革新的薬剤の開発に向けて研究を進めています。 この研究は、疾患特有の生物学的進行過程を分子レベルで画像化する手法に役立ちます。
バイエル・シエーリング・ファーマ社は分子イメージングの分野で、スタンフォード大学(米国)、チューリッヒ工科大学(スイス)など、多くの研究機関と提携しています。長崎大学は、この産学連携研究ネットワークの強力な一員として、新たに加わることになります。
バイエル ヘルスケア社について

バイエルは、ヘルスケア、農薬関連、先端素材の領域を中核事業とするグローバル企業です。バイエル社の子会社であるバイエル ヘルスケア社は、ドイツ・レバクーゼンを本拠とする、ヘルスケアと医薬品業界の革新的なリーディングカンパニーです。同社の世界的な事業活動は、動物用薬品、コンシューマーケア、ダイアベティスケア、医療用医薬品の分野に及びます。このうち、医療用医薬品事業は、バイエル・シエーリング・ファーマ社の名称で運営されています。バイエル ヘルスケア社の目標は、人類と動物の健康を促進する製品を開発し製造することです。
www.bayerhealthcare.com

バイエル・シエーリング・ファーマ社について

バイエルグループの一員であるバイエル・シエーリング・ファーマ社は、世界的なスペシャリティ医薬品企業です。画像診断薬、ジェネラルメディシン、スペシャリティメディシン、ウイメンズ ヘルスケアの4領域に注力し、研究開発及び事業活動を展開しています。バイエル・シエーリング・ファーマ社は、その革新的な製品で、世界のスペシャリティ医薬品市場における主導的ポジションを目指します。そして、新しいアイディアを活かして医療の進歩に貢献し、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に努めます。
www.bayerscheringpharma.de

バイエル薬品株式会社について

バイエル薬品株式会社は本社を大阪に置き、バイエル・シエーリング・ファーマ(医療用医薬品)、コンシューマーケア(一般用医薬品)、ダイアベティスケア(糖尿病ケア製品)、動物用薬品(コンパニオンアニマルおよび畜産用薬品)の4事業からなるヘルスケア企業です。2007年7月1日にバイエル薬品内に設立されたバイエル・シエーリング・ファーマ事業本部は、診断薬、プライマリーケア、オンコロジー、スペシャリティケア、ウイメンズ ヘルスケアの5領域に注力しています。バイエル薬品株式会社は、その革新的な製品で、日本のスペシャリティ医薬品市場におけるリーディングポジションを目指しています。そして、新しい発想と高い専門性を持つ人材を活かして医療の進歩に貢献し、人々のクオリティ・オブ・ライフの向上に努めます。
http://www.bayer.co.jp/byl

 

(2008年9月10日)

・英テラジェネティクス社、キングスカレッジロンドンのアルツハイマー病薬に関するPGx研究で提携

(Genome Technology Online)

イギリスの臨床検査・診断会社であるテラジェネティクス(TheraGenetics:英・ロンドン、2006年設立)は、キングスカレッジロンドンが行っている大規模AddNeuroMed研究の中のアルツハイマー患者を対象としたコリンエステラーゼ阻害剤に関する研究(バイオマーカーの発見・開発等)で提携し、これに参加することとなった、と発表した。

同社は、アルツハイマー病、精神分裂病、うつ病、双極性障害および注意欠陥多動障害に対する診断用試験を開発するため、中枢神経系障害と関係する遺伝子マーカーを探索しているベンチャー企業である。

AddNeuroMedは、欧州製薬産業・工業会連盟(European Federation of Pharmaceutical Industries and Associations:EFPIA、欧州各国から32の製薬関連工業会及び42の代表的製薬企業が参加)に加盟しているの製薬企業とパートナーシップを組んでいるEU(欧州連合)によって設立された組織で、アルツハイマー疾患のためのバイオマーカー発見に向けた分析用機器や疾患モデル(動物)、コホートなどの開発を目指している。

(以下省略)

詳細は下記のサイトにアクセスしてください。

http://www.genomeweb.com/issues/news/149315-1.html

 

(2008年9月10日)

・アルツハイマー病、診断薬の候補物質、京大、病変を素早く察知。

(日経産業新聞 2008年9月10日)

 京都大学の小野正博准教授らはアルツハイマー病を早期診断するのに有望な候補物質を開発した。一般の診療所でがんなどの診断に使われる単一光子放射断層撮影(SPECT)向けの試薬で、アルツハイマー病の病変があると光るなどして診断の目印になる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けた成果だ。
 開発したのは「フラボン誘導体」と呼ぶ分子を加工した試薬で、アルツハイマー病の患者の脳内の病変だけに結合する。SPECTで診断するときの目印になるため、早期診断につながる。マウスで効果を確認した。
 SPECTは体内に投与した放射性同位元素から出る放射線を検出する装置で、がんなどの診断に使われている。同様の診断装置である陽電子放射断層装置(PET)よりも小型で安価なため一般の診療所などでも普及が進み、国内ではPETの13倍に当たる二千施設で導入されている。
 ただ、SPECT向け試薬はPET向け試薬と比べて特殊な放射性元素が必要なため開発が困難で、アルツハイマー病診断薬はこれまでなかった。開発した試薬が実用化できれば、一般の診療所・病院でも診断できるようになるという。製薬会社と協力して5-10年後の実用化を目指す。

 

(2008年9月11日)

・アークレイ、塩基配列、80分判別、全自動の検査装置。

(日経産業新聞 2008年9月11日)

 検査機器メーカーのアークレイ(京都市、土井茂社長)はヒトのDNA(デオキシリボ核酸)を構成している塩基の配列を検出する全自動遺伝子検査装置を開発した。来年初めにも発売する。SNP(一塩基多型)と呼ぶDNAを構成する塩基配列の微妙な違いを判別する。複数の装置を使うため一日がかりだった判別作業が八十分に短縮できる。
 新装置は塩基配列の違いから薬の効き目など個人の体質を判別、最適な治療法を提供するための研究に使う。一度に検査できる検体数が四つで、テーブルに載る程度の大きさの小型タイプ。血液や粘膜などの検体と試薬を装置にセットすれば、自動的に検体に含まれるDNAの断片を検出可能な量まで増やし、SNPを判別する。
 検出にはバイオベンチャーのJ―Bio21(東京・千代田、児玉俊史社長)が持つ技術を活用した。検出対象の塩基配列のDNA断片に強く結合し、結合した時には光が弱まる蛍光色素を用意。蛍光色素は検出対象でない断片でも結合はするが結合力が弱いため、加熱すると分離する。
 検出対象の断片と結合した場合はそれ以外の断片に比べ、セ氏五―十度高い温度で離れ、光が強まる。この光が強くなった温度の差からDNA配列の違いを検出する。
 DNAを構成する塩基配列の微妙な個人差によって、薬剤の代謝能力や副作用の出やすさに差が出る。投与する薬の種類や量を調整し、副作用を最小限にとどめるなど患者にあわせた治療ができるため、この分野の研究が加速している。
 アークレイはこれまで自己血糖測定器など糖尿病関連の検査装置開発を手がけてきた。研究用の遺伝子検査機器の需要が高まると判断、遺伝子関連の分野に進出した。

 

(2008年9月11日)

・抗体医薬、相次ぐ新薬――次世代本命、ペプチボディ(イノベーションの潮流)

(日経産業新聞 2008年9月11日付け)

標的との結合限界も打破
 大腸がんの抗体医薬「アービッタックス」が、二〇〇八年九月、わが国でも販売認可を獲得した。ドラッグラグのため、時ならぬ抗体医薬ブームがわが国に起こっている。しかし、米国ではその繁栄の陰で次世代抗体医薬の本命の一つが産声を上げていた。〇八年八月二十二日に米食品医薬品局(FDA)が販売を認可した「エヌプレート」がそれである。
 米国アムジェン社が開発したエヌプレートは、ペプチボディと呼ばれる新しいバイオ医薬である。血小板増殖因子(TPO)の受容体と結合し、血中の血小板を増加する造血ホルモン様作用を示す。
 血小板の増殖作用が抑止されて発症する血小板減少性紫斑病の治療薬として認可されたが、現在、同社は抗がん剤による血小板減少症など幅広い適応拡大を目指し、追加の臨床試験も行っている。大型新薬と株式市場での評価も高く、FDAによる赤血球数増加薬の使用制限で低迷していた株価もよみがえった。
 しかし、エヌプレートの意味はそれだけには収まらない。今では抗体ベンチャー企業の買収によって、抗体医薬企業としても成長するアムジェン社。エヌプレートは同社が次世代抗体医薬企業としても、ペプチボディによって更に大きく飛躍する可能性があるためだ。
 つまり抗体医薬の欠点であった高い製造コスト、特異性や親和性の高い抗体を得るのが必ずしも容易ではない点、そして必ずしもすべてのヒトたんぱく質と結合する抗体はできないという限界を、ペプチボディが打破できる可能性があるのだ。
製造コスト優位
 エヌプレートの分子構造は、抗体断片(定常部位、Fc)と血小板増殖因子受容体と結合する短いペプチド断片(アミノ酸十五個が直線状に重合)を二個、スペーサー配列を介して結合した人工たんぱく質だ(図)。二分子が会合して作用する。たんぱく質に対応するDNAを化学合成し、大腸菌でエヌプレートを、アムジェン社は工業生産している。動物細胞を宿主に製造する抗体医薬と比べ製造コストで圧倒的な優位に立った。
 抗体はY字型をしたたんぱく質で、Fcは抗体の脚の部分。Fcとペプチドの融合たんぱく質は患者に静脈注射しても血中で極めて安定であり、目的の標的たんぱく質と結合して薬効を示すことができる。
 実はポスト抗体医薬の本命は従来、ペプチド医薬だと、専門家の間では信じられていた。低分子の医薬品では実現できない、特異性高く細胞の標的たんぱく質を介した刺激を阻害したり、刺激そのものを入れたりすることが、試験管内ではできるためだ。しかも、バイオの進展によって病気のメカニズムがどんどん解明され、ペプチド医薬の標的も増加した。
 しかし、ペプチド医薬には、患者の体内に注射するとあっという間に、血中のたんぱく質分解酵素のために、バラバラにされ薬効を発揮できないという実用化の大きな壁があった。多数の企業が誘導体や薬剤送達システム(DDS)に挑戦したが、いまだ充分な成果を上げていない。ペプチボディはこのペプチド医薬の限界をも打破してしまったのだ。
 加えて周辺技術の進歩も追い風となった。受容体や標的たんぱく質の立体構造情報から目的の標的に結合するペプチドをデザインする技術も向上してきた。また、大腸菌に感染するウイルスの殻たんぱく質の一部にランダムなアミノ酸配列のペプチドを発現して、特定の標的に親和性高く結合するペプチドを効率良く試験管内で選択する方法(ファージディスプレー)も実用化した。
 その結果、特異性高く、そして親和性も高い、医薬候補となるペプチドを自在に開発できるようになった。
作動薬として作用
 リウマチの特効薬となったエンブレルのようなFc融合たんぱく質も既に、一九九八年にアムジェン社が商品化している(表)。米リジェネロン社もFc融合たんぱく質を実用化、さらに独バイエル社と提携して、わが国でも臨床開発に着手した。しかし、こうしたFc融合たんぱく質は、受容体たんぱく質の一部を転用せざるを得ないため、抗体医薬やペプチボディのようにどんな標的たんぱく質と結合するバイオ医薬を開発することができなかった。
 実際、Fc融合たんぱく質では、標的の受容体と競合して阻害する医薬品しか開発できない。エンブレルもリウマチ患者の炎症を引き起こす腫瘍壊死(しゅようえし)因子の阻害剤である。
 ペプチボディにはこうした限界がない。エヌプレートはTPO受容体と結合して、TPOとまったく同様に、血小板増殖を誘導する。つまり作動薬(アゴニスト)として作用するのだ。自己抗体誘導などの副作用や製造コストに問題のある成長因子やホルモンを、ぺプチボディで置き換えることが可能となるだろう。
 また、アムジェン社はペプチボディで阻害剤も臨床開発中だ。アンジオポエチンというがん組織で血管を誘導する成長因子と結合し、その作用を阻害するペプチボディを、現在、欧米で抗がん剤として臨床試験フェーズIIまで進めている。
 昨年、新たなFc融合技術を元に、アムジェン社の元研究員が日本のベンチャーキャピタルの支援を受けて、ジェネティックデバイシス社を米国に創設した。新興ベンチャーも続々と参入する構えである。
 「ただペプチドとFcを結合すればよいというものじゃない」というアムジェン社の余裕もいつまで持つか分からない。(日経BP社 宮田満)ールはTPO受容体と結合し、TPO様作用を持つ抗体医薬を開発したが、まだ実用化していない。(以下省略)

 

(2008年9月11日)

臨床検査受託3社、大阪で共同検査施設、翌日には報告、稼働率高く

(日経産業新聞 2008年9月11日付)

 臨床検査受託業界で競合企業が手を組む試みが始まった。業界二位のビー・エム・エル(BML)は関西の地場企業と共同出資会社を設立し、検査業務を集約して効率を改善する体制を整えた。診療報酬改定などの影響で市場縮小が止まらないなか、中堅以下の企業が生き残る手法としても注目を集めている。
 毎日夕方になると、オー・ピー・エル(OPL、大阪府茨木市、広田周一社長)の本社には医療機関から回収した検体を積んだ営業車が続々と戻ってくる。ただ、記載されている社名は車ごとに違う。
 OPLにはBMLと近畿予防医学研究所(大津市、広田周一社長)、中央微生物検査所(大阪市、杉村利史社長)が出資している。開かれた検査施設を意味する「オープン・プラットフォーム・ラボラトリー」が社名の由来。BMLや近畿予研など出資企業の検査業務を請け負っている。
 診療報酬改定などの医療費抑制策に伴い、臨床検査受託業界は市場縮小が続く。BMLによると臨床検査受託の企業は二百社前後ある一方で、大手五社の売り上げが国内市場の過半を占め、中堅中小は厳しい経営環境にさらされる。
 「M&A(合併・買収)されるしかなかった中堅や中小の臨床検査受託会社が生き残る一つの形」と、広田社長はOPLについて説明する。
 もともとBMLと近畿予研が二〇〇六年に、関西地域での業務効率改善のためにOPLを設立した。今年2月には中央微検も資本参加し、三社の共同事業に姿を変えた。中央微検の杉村社長は「単独で数億円規模の設備投資を負担する必要がなくなった」と話す。
 中央微検には、一台あたり数千万円の検査装置導入など設備投資負担が重くのしかかっていた。OPLとしての設備投資は必要だが、単独実施に比べ負担は軽く、設備稼働率も高い。
 顧客サービスが向上する効果も表れている。腫瘍(しゅよう)マーカーなど自社で設備を持たないため検査できなかった項目は、BMLなどの大手に再発注していたため、発注元の医療機関などに結果を報告するまでに数日かかっていた。
 近畿予研の広田社長と中央微検の杉村社長は「少ない投資で最大限の効果を生み出せる」と口をそろえる。OPLは腫瘍マーカーやホルモン検査など特殊検査も処理できる設備をそろえ、翌日には結果報告が可能。迅速な対応を売り物に営業活動にも弾みを付ける。
 一方、BMLは参加企業が増えると検査施設の稼働率が上がる。知名度の高い地場企業と組むことで、開業医を中心に新規顧客の獲得にもつながる。緩やかな連合を組んでおけば、自ら買収しなくても

他社の傘下に入るリスクを減らせる。
 現在の課題は、営業面はあくまで競合相手であること。BMLと中央微検は大阪府でシェア争いを繰り広げる。中央微検が開業医、BMLが病院とすみ分け、営業効率を上げることも検討する。検体の集配を一本化して業務効率を改善することも視野に入れる。
 今月13日からは中央微検の検体がすべてOPLに持ち込まれるようになり、三社共同で検査する本格的な体制が整う。真価が問われるのはこれからになりそうだ。(若杉朋子)

 

(2008年9月12日)

・米NIH、筋ジストロフィーの診断治療のためのバイオマーカー研究で900万ドルの助成金を決定

(GenomWeb Daily News)

米国のNIH(国立衛生研究所)は、ボストン・バイオメディカル・ランド研究所(Boston Biomedical Lands)に対し、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy:FSHD)の治療・診断のためのバイオマーカー研究に900万ドル(約10億円)の資金を提供すると発表した。

この研究は、治療薬の臨床試験において治療の有効性をモニターする際に使用できる分子のマーカーを探索・決定するとともに、それを用いて薬剤や細胞治療(cell-based therapeutics)を開発する際に使用する正常な筋肉幹細胞のリポジトリーを準備しようとするものである。(以下省略)

 

 (2008年9月12日)

・オリンパスとジーンケア研、RNA量、正確に計測、不純物除き判定。

(日経産業新聞 2008年9月12日付け)

次世代薬の開発に効果

 オリンパスとバイオベンチャーのジーンケア研究所(鎌倉市、六川玖治社長)は血液や肝臓などから抽出したRNA(リボ核酸)を微量でも正確に計測する技術を開発した。RNAは様々な病気の発病に関係することが分かり、その働きを抑える「RNA干渉薬」など次世代薬の開発も進み始めている。薬の効果の研究などに役立つとして、製薬会社や大学などに提供する。

 開発した技術は採取したRNAの濃縮溶液にレーザー光を当てて数を測る仕組み。まず、採取した肝臓などの生体試料(サンプル)からすべてのRNAを抽出して濃縮。そこに蛍光物質を付けた人工DNA(デオキシリボ核酸)を入れ、狙った種類のRNAだけに結合させて目印を付ける。

 この溶液を専用装置に入れて直径一マイクロ(マイクロは百万分の一)

(以下省略)

 

<バイオマーカー関連の最近の論文紹介>

(2008年6月)

○再発予測バイオマーカー―多発性硬化症 診断法の開発

佐藤準一(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科バイオインフォマティクス)

(日本臨牀 第66巻6号 2008年6月号 P1103-1111 日本臨牀社)

<はじめに>

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は, 自己抗原反応性T細胞により惹起される時間的・空間的再発を特徴とする中枢神経系炎症性脱髄疾患で, 若年成人に好発し, いまだ根本的原因不明の難病である. MSは自然経過で髄鞘再生により寛解するが, 再発を反復して炎症が遷延化すると髄鞘再生不全・軸索傷害・神経変性をきたして, 失明や対麻痺など重篤な神経機能障害を残す. 1990年代以降, 国際的な大規模臨床試験により, インターフェロンベータ(interferon-beta:IFNβ)のMS再発抑制効果がエビデンスレベルIで立証された1). またMSの前駆病態である初回アタック(clinically isolated syndrome:CIS)の時点でIFNβを投与すると, MSへの移行を抑制することが報告された2). 現在, MS再発期(急性増悪期)は副腎皮質ステロイド短期間大量静脈内投与(intravenous methylprednisolone pulse:IVMP), 寛解期はIFNβまたはアミノ酸ランダムポリマーcopolymer-1(glatiramer acetate)の継続的投与が, 最も一般的治療法として選択されている.。(以下省略)

・同研究室の研究テーマ

多発性硬化症の個別化医療の樹立:患者リンパ球や脳組織の遺伝子発現プロフィールをDNAマイクロアレイで網羅的に解析し、多発性硬化症の早期診断・治療効果・副作用のバイオマーカーを探索し、新規治療薬を開発し、個別化医療を目指す。

 

(2008年8月)

○癌診断治療のバイオマーカー

尾野雅哉、佐藤礼子、下重美紀、本田一文、山田哲司(国立がんセンター研究所化学療法部)

(Cancer Frontier  Vol.10. 2008、P14-20)

<要旨>

バイオマーカーは生体材料に存在する計測可能な客観的指標であり、バイオマーカーの開発に当たっては、無数にある生体物質から有用な物質を見つけだす探索過程(Discovery Phase)と見つけた物質が真に臨床的に有用であるかを検証する過程(Validation Phase)の二つの大きな過程が存在する。本稿は我々が行っている手法を例示し、がん診断治療のバイオマーカー開発の現況を解説する。

<Ⅰ.バイオマーカー>

1.バイオマーカーの定義

 バイオマーカーは、「NIH study group 1998」の定義に見られるように、生理的、病理的、薬理的な変化に対応する計測可能な客観的指標となる性格を有するものである。この定義に従えば画像診断における腫瘍陰影も含まれることになるが、一般的には体液や組織などの生体材料に存在する計測可能な客観的指標をバイオマーカーとしている。

 このため、疾患特異的な物質が存在しても、臨床的に測定不能であればバイオマーカーとなりえず、生物学的な機構の詳細が不明なものでも、疾患のよい指標となるもであればバイオマーカーとなりうる。(中略) プロテオミクスで扱うスポットやピークもそのような意味でバイオマーカーとなりうる。

 また、疾患に由来するものだけでなく、その疾患に対する生体の反応により起こる変化であっても上記の条件の満たせばバイオマーカーとなりうるので、バイオマーカーの開発に当っては疾患が産生する物質だけでなく、疾患に起因するさまざまな生体反応の総体的な結果として起こる変化をとらえることも重要となる。

 バイオマーカーじゃ臨床的に意義を持つことを最終目標としているため、バイオマーカー開発は常に臨床を意識して行わなければならない。

 

2.バイオマーカー開発のロードマップ

テキスト ボックス: 探索過程テキスト ボックス: 検証過程 バイオマーカーの開発に当っては、上述のように探索過程(discovery phase)と有用の検証過程(valida‐tion phase)の2つの大きな過程が存在し、それらは全く違った方法論で検討しなければならない。一般的に探索過程では少ないサンプルの検討から多数のバイオマーカー候補を拾い出し、検証過程においては絞り込まれたバイオマーカー候補を多くのサンプルで確かめることになる。

1)バイオマーカーの探索

 生体に存在する物質は無数にあり、遺伝子(核酸)、蛋白質、糖鎖、脂質などの生体物質などの生体物質として計測できるものであれば、どのようなものでもバイオマーカーとなる可能性がある。しかし、バイオマーカーとして意義を持つものは極めて限られており、効率よくバイオマーカーを探索する方法を探索することが重要となる。

 研究の第一歩はどのようなバイオマーカーを開発するかを決定することである。(中略)目的とするバイオマーカーが決定されると、その開発のためにはさまざまな方法や材料が選択される。材料としては、in vitroの実験系で対照群を作り上げ、その違いを比較することから始める方法もあれば、より出口に近い臨床材料を出発点として解析していく方法もある。また、研究方法もプロテオミクス、ゲノミクスの網羅的アプローチやバイオロジカルなアプローチなど、各研究機関が得意とする方法の数だけ存在する。(中略)

2)バイオマーカーの検証

 探索されたバイオマーカーは、その段階では候補に過ぎず、検証されて始めてバイオマーカーの地位を確立する。(中略)

 検証されるべきバイオマーカーは絞り込まれているため、検証の際はそのバイオマーカーをもっとも効率よく定量解析できる方法を選ぶことが重要である。探索で見つけられたものが蛋白質で、それに対する抗体が存在すれば、その抗体を用いた既存の検査法を用いることが可能である。抗体が存在しない場合には、特異抗体を作成した上で、既存の検査法を用いることも可能である。(中略)

<Ⅱ.癌診断治療のバイオマーカー>

1.どのようなバイオマーカーが求められるのか

 癌のバイオマーカーは早期診断のための癌早期における変化の指標、治療奉効性を知るための指標、予後予測の指標として一般的に開発が進められているが、臓器に応じ必要とされるバイオマーカーの用途は変わってくるため、さまざまな種類のバイオマーカーの開発が望まれているのが現状である(表1)。

 
2.診断のためにはどのようなバイオマーカーが必要か

 膵癌や婦人科癌は深部臓器であるため早期診断が難しく、早期診断に必要なバイオマーカーが求められている。また、膵癌では手術侵襲が大きいため、癌との鑑別が困難な良性疾患を見分けるバイオマーカーの開発も期待されている。大腸癌では便潜血反応によるスクリーニング法は検証された手法として認められているが、より精度を上げるためにスクリーニングに有用な血液や便のバイオマーカーも必要とされている。

 

3.治療のためにはどのようなバイオマーカーが必要か

 化学療法が一定の成果を挙げるようになってきた現状では、それらの薬剤を効率的に使用するために、治療効果予測や副作用発現予測が可能なバイオマーカー開発が重要になってきている。このように、現存治療の有用性を知るバイオマーカーの開発とともに、新薬の開発を目指す治療標的となるバイオマーカーの開発も期待されている。癌の治療標的を直接探索するだけでなく、癌のバイオマーカーの探索から癌に特異的に発現する物質が直接、あるいは間接的に治療薬に結びつく可能性があるためである。

 

<Ⅲ.バイオマーカー開発手法>

(詳細は略)

1.2DICAL(2Dimensional Image Converted Analysis of LCMS)法

2.SELDI-QqTOF-MS(surface enhanced laser desorption/ionization time of flight mass spectrometry)法

3.ゲノミクスによる探索

4.癌の治療標的分子の探索

 

<セミナー>

○次世代シーケンサーが変えるバイオ研究の未来

(BTJプロフェッショナルセミナー 2008年9月18日)

昨年から今年にかけて相次いで商品化された次世代シーケンサーは、生命科学とバイオ産業に大きな変革を迫る技術と言えます。一回の運転で読める塩基数は従来の数百倍から数万倍、1塩基あたりの解析コストは数十分から数百分の一、と飛躍的な進化を遂げています。07年11月末に東京で開催された第7回国際ゲノム会議でも次世代シーケンサーの威力を示す成果が発表されたりしており、その流れはいよいよ加速していきそうです。

ゲノム解析を行う上のコスト、時間的な問題を解決する画期的なイノベーションであるという注目の技術である反面、日本では産業化のプロセスが立ち遅れているという懸念がありますが、今後は個人のゲノム解析や環境中のメタゲノム解析への展望も開かれ、今までシーケンサーが応用されなかった、詳細な遺伝子発現解析、ジェノタイピィング、エピジェネティクスなども、次世代シーケンサーの解析対象となり、ゲノム研究は格段の飛躍を遂げるものと大きく期待されています。

本セミナーでは、具体的な「ユーザーズボイス」を中心に次世代シーケンサーの課題と可能性を徹底議論いたします。受講対象者は、次世代シーケンス技術を導入して医薬、診断薬、バイオインフォマティクス、食品、農業、環境エネルギー(ホワイトバイオ)などの産業化に関心を抱く第一線の研究者、製薬企業・ベンチャー企業関係者、また、次世代シーケンスに対して強い関心を持つ基礎究者などです。

日 時

2008年9月18日(木)10:45~18:00

主 催

日経BP社 Biotechnology Japan

協 賛

ロシュ・ダイアグノスティクス イルミナ アプライドバイオシステムズ ジャパン

会 場

コクヨホール(JR・京急線品川駅 港南口(東口)駅前

 

<プログラム>

「次世代シーケンスが変える生命科学・バイオ産業」

理化学研究所オミックス基盤研究領域 領域長 林崎 良英氏

「次世代シーケンスと情報戦略」

国立遺伝学研究所遺伝情報分析研究室教授 五條堀 孝氏

「次世代シーケンスが加速する疾患解析と個の医療」

東京大学医学部神経内科教授 辻 省次氏

「iPS細胞研究に貢献する次世代シーケンス」

京都大学医学部小児科准教授 平家 俊男 氏(iPS細胞研究センター 山中 伸弥 教授と共同研究)

ビジネスプレゼンテーション

ロシュ・ダイアグノスティクス

パネルディスカッション
「次世代シーケンスはわが国の生命科学・バイオ産業にどんな変革を迫るのか? この未曾有の技術革新に我々はどう取り組むべきなのか?」

[司会] Biotechnology Japan Webmaster  宮田 満
・東京大学医科学研究所ゲノム制御医科学教授 菅野 純夫氏
・東京大学先端科学技術研究センター 油谷 浩幸 教授
・文部科学省ライフサイエンス課課長 菱山 豊氏
・スタージェン情報解析研究所所長 鎌谷 直之氏

 

 

Google


what's new

■海外の調査報告書の紹介・販売

㈱サイリックでは、米国の医療(ヘルスケア)産業や医薬品産業を専門に調査分析を行っているファーマフォース・インターナショナル (PharmaForce International:本社、Reading,PA)と提携し、同社が調査・発行している「調査報告書」や「マルチクライアント調査スタディ」を日 本において販売開始します。 詳細は《こちら》

■Sciric News Letter

㈱サイリック提供
最先端バイオ産業情報

この情報は、米欧などで発行されている主要科学専門誌や経済専門誌、ニュースペーパーなどに掲載されたバイオテク産業関連の評論や分析、予測、注目すべき動向などの記事・論文から選んで原則として全文を日本語で提供するものです。 《2005年6月号》

■計画中の企画■

調査資料

■予約受付中の資料■

・地域バイオ産業要覧
・地域バイオ企業便覧

■過去の資料■

セミナー・研究会

■参加募集中■

■関連セミナー案内■

受託調査・研究業務

 

・市場調査等のご注文

翻訳サービス

 

・論文・資料の翻訳受付