バイオマーカー・トピックス(No16.2008年6月9日)
バイオマーカーの探索・発見・適応への関心が内外で急速に高まってきています。トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等のポストゲノミクス研究の急速な進歩と実用化、テーラーメイド医療の進展、癌などの各種疾病の早期発見・診断への関心の高まりなどを背景に、それに寄与できるバイオマーカーが注目されてきているからです。
「バイオマーカー・トピックス」は内外で発信される数多くのニュースや雑誌記事、論文などから適宜選んで、その要約やポイントを日本語で紹介するものです。
皆様の研究活動やビジネスに少しでも役立てばと願っています。
なお、翻訳はサイリックが担当しており、専門用語などは的確でない場合もあることをご容赦ください。また長文の場合はサイリックの判断で一部のみを紹介しています。正確なことは直接原典で確認してください。(多田 丞)
<目次>
・群馬アレルギーぜんそく研、治療薬の効果を遺伝子型で判定できる手法を開発... 1
・第48回日本呼吸器学会学術講演会でのバイオマーカー関連の演題... 3
・第48回日本呼吸器学会学術講演会での腫瘍マーカー関連の演題... 5
・Fighting Cancer -- and Now Inflation Too. 7
・Genetic mutation will narrow target cancer groupe. 7
・Genetic Research May Help Pick Patients' Best Cancer Drugs (The Wall Street Journal). 7
・Nature Reviews Cancer 8(6), (Jun 2008). 8
・実験医学増刊号 Vol.26 No.10 『RNAの機能解明と医療応用』. 9
(2008年5月27日)
群馬アレルギーぜんそく研、治療薬の効果を遺伝子型で判定できる手法を開発
群馬アレルギーぜんそく研究所(所長:黒澤元博、所在地:群馬県邑楽郡邑楽町、設立:2006年11月)は、気管支喘息治療に使われる薬剤が、患者の体質に合うかどうかを遺伝子の簡単な検査で判定できる方法(SSTEC法)を開発した。薬剤の効果を判定したり、副作用などの防止に役立つとしている。この研究成果について2008年6月15-17日に開かれる第48回日本呼吸器学会学術講演会(会場:神戸市、神戸コンベンションセンター)において発表される(同6月16日、下記の「発表要旨」を参照してください)。
ぜんそくの治療には気管支を拡張する薬を吸入する。しかし、特定の遺伝的体質を有する患者では薬が逆に肺機能を低下させ、症状を悪化させという米国の研究結果が2000年、2006年の同国に学会誌に発表されていた。
ぜんそく患者でのこの気管支拡張薬が適合するかどうかを遺伝子検査で行う方法は、こくないはもとより、海外でもまだ一般の病院では臨床応用されていない。また、現在の血液による遺伝子検査では長時間を要する(約4時間)とされる。
そこで、同研究所は、口の中の粘膜を綿棒で採取し遺伝子型の塩基配列を調べる「塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法」(SSTEC法)で解析することで、検査時間を約2時間にすることができた。血液採取の必要がないため、乳幼児でも検査が容易で、その日のうちに適切な治療方法が分かれば、患者の負担も軽減できる、としている。
同研究所によると、国内の気管支ぜんそくの患者は250万~300万人である。吸入式の気管支拡張薬を使っているぜんそく患者404人を対象に調べた結果、15%の59人には薬の効果がなかった。患者の遺伝子型を調べたところ、いずれも「祖先型」で、「変異型」の患者には薬の効果が現れた、ことが確認された。
(以上は、朝日新聞、毎日新聞、その他新聞各紙から要点をまとめたものである。2008年5月27日図家の新聞各紙を参照してください)
<第48回日本呼吸器学会学術講演会での発表要旨>
ポスター・ミニシンポジウム
MS212・PP578 気管支喘息患者におけるADRB2遺伝子多型―塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(SSTEC法)によるわが国初の検討
黒沢元博,阿部修三,森岡潤一郎,稲村弘明
群馬アレルギーぜんそく研究所
【目的】長時間作用型β刺激薬(LABA)が広く使用されているが,LABAで喘息症状が増悪するサブグループの存在が指摘されている.これに関しては,β受容体遺伝子多型との関連が欧米では報告されているが,わが国における検討は未だ十分ではない.【方法】対象は気管支喘息患者217名(平成19年11月現在).患者の口腔粘膜を綿棒で擦過し,サンプルを採取した.サンプルよりDNAを抽出し,PCRで増幅した後,測定に供した.測定には特定塩基配列をもつ固定化プローブDNAカラムを用い,PCR産物とのハイブリザイゼション後にカラム温度を徐々に上げ,熱溶出の順序でSNPの有無を判定するSSTEC法によりADRB2(adrenergic receptor beta 2)codon 16 のタイピングを行った.
【成績】217名の検討結果で,codon 16のアミノ酸がArg/Arg(Wild Homo),Arg/Gly(Hetero),Gly/Gly(Mutant Homo)を示した患者は,25名(12%),102名(47%),90名(41%)であった.LABA使用中止により,喘息症状の明らかな改善を認めた2症例(62才と65才の女性,両者ともWild Homo)を経験した.【結論】気管支喘息患者におけるADRB2遺伝子多型についてSSTEC法によるわが国初の検討を行い,臨床病態との関連を示唆した.
第48回日本呼吸器学会学術講演会でのバイオマーカー関連の演題
(2008年6月15日-17日、神戸コンベンションセンター)
<演題リスト>
・間質性肺炎とバイオマーカー
・COPD発症に関与する気道被覆液中バイオマーカーのプロテインチップによる検出
・リンパ脈管筋腫症におけるマスト細胞の役割:血清中マスト細胞関連バイオマーカーの検討
・慢性閉塞性肺疾患の呼吸機能予後予測因子としての血清バイオマーカー
・COPD患者における血中バイオマーカーの検討
EL‐13 間質性肺炎とバイオマーカー
高橋弘毅
札幌医科大学内科学第三講座
間質性肺炎(IP)は,膠原病肺,過敏性肺炎,薬剤性肺障害等から,原因不明の特発性間質性肺炎(IIPs)に至るまで,多種多様な疾患群の総称である.腫瘍性疾患とは異なり,病理診断や画像診断の解釈が複雑なため,鑑別診断は必ずしも容易ではない.また,治療法が確立された疾患群から難治性のものまで治療反応性も一様ではない.したがって,血液検査,呼吸機能検査等も加えた総合的評価がIPの診断と治療の決め手となる.
臨床的に有用な血清バイオマーカーとして,近年,KL-6,SP-A,SP-Dが用いられるようになった.いずれも,IPへの高い鋭敏度と特異度を示す.急性型IPや慢性型IPの急性増悪時の診断,治療効果の判定,活動性評価,予後判定などに使用されている.3種類のIPバイオマーカーを同時に測定してみると,異なる変動を示すことが意外と多い.例えば,びまん性肺胞障害等の細胞障害性で重篤な経緯をとる症例では,血清マーカーは3つ全て増加するが,好酸球性肺炎等のアレルギー性機序による肺障害ではSP-A・SP-Dが増加し,KL-6は増加しない傾向がみられる.そのメカニズムは未解明であるが,この現象は疾患,病態に応じたバイオマーカーの有効な使い分けの可能性を示唆するものである.
本講では,IPバイオマーカーの臨床的有用性について,最近の知見を中心に解説させていただく.
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ポスター・ミニシンポジウム
MS36・PP95 COPD発症に関与する気道被覆液中バイオマーカーのプロテインチップによる検出
中村美穂1),仲村秀俊2),中島隆裕3),舘野博喜1),辻村周子1),白畑 亨1),高橋左枝子3),石坂彰敏1)
慶應義塾大学呼吸器内科1),東京電力病院内科2),川崎市立川崎病院内科3)
COPDの関連する蛋白発現についてプロテオミクスを応用した臨床報告は数少ない.COPD患者は低肺機能のため気管支鏡下に気管支肺胞洗浄や肺生検を行うことは困難であった.気管支鏡下に非侵襲的に気道被覆液(ELF)を採取する方法でマイクロサンプリング法があげられる.近年プロテオーム解析技術の進歩により微量検体から網羅的な蛋白検出が可能となってきた.COPDの病態に関連するバイオマーカー検索のためマイクロサンプリングにより採取したELFを用い,バイオラッド社製プロテインチップ(Q10)によるプロテオーム解析を行った.ELFはCOPD15例(平均%FEV1.071%,平均年齢71歳),対照群12例(%FEV1.0103%,65歳)から採取した.分子量3千-7万の間の全シグナルを用いて補正し2群間の蛋白発現を比較した.62のピークが認められ,このうち分子量8170,31902Daの2つのピークでCOPD群は対照群に比べ発現が低下した(p<0.01).分子量11207DaではCOPD群は対照群に比べ発現が増加した(p=0.01).今後検出された蛋白の同定が必要であるが,プロテインチップによるELF中蛋白の解析によりCOPD特異的なバイオマーカーの検出が可能と考えられた.
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ポスター・ミニシンポジウム
MS147・PP398 リンパ脈管筋腫症におけるマスト細胞の役割:血清中マスト細胞関連バイオマーカーの検討
広瀬雅樹1),井上義一1),松室昭子1),喜久山綾乃4),新井 徹2),橘 和延2),大家晃子2),杉本親寿2),源誠二郎1),西山明秀2),北市正則3),審良正則4),林 清二2),岡田全司1),坂谷光則2)
国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター1),内科2),研究検査科3),放射線科4)
【目的】我々はこれまでリンパ脈管筋腫症(LAM)肺組織中のLAM細胞増殖部位でマスト細胞が多く認められbFGFを発現,かつLAM細胞はFGFRsを発現している事を報告した.マスト細胞は他臓器,他疾患においても組織修復,脈管新生の場で重要な役割を担っていると考えられるので,今回マスト細胞の増殖に関連する各血液中バイオマーカーの挙動を検討した.【対象と方法】LAM患者48名(女性48名男性0名,年齢33±18才),健常コントロール21名(女性21名,男性0名,年齢26±4才)の血清中IL-4,IL-5,IL-10,tryptase,bFGF,VEGF-A,VEGF-DをEIA法で測定した.【結果】LAM患者血清中IL-5,IL-10,VEGF-Dは健常者に比べて有意に増加していた.Tryptase(一部患者で測定)は健常者と差を認めなかった.bFGFは今回感度以下であった.血清中IL-5,IL-10は各々有意相関し変動を示したが,VEGF-Dとは相関しなかった.【考察】LAM患者ではTh2サイトカイン発現が亢進しており,マスト細胞の増殖への関与が示唆された.
ポスター・ミニシンポジウム
MS161・PP438 慢性閉塞性肺疾患の呼吸機能予後予測因子としての血清バイオマーカー
東本有司,岩田拓也,岡田守弘,佐藤博明
和歌山県立医科大学紀北分院内科
【目的】我々は,全身性炎症を反映する血清バイオマーカーの血清中濃度が,コントロール患者に比べて慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者で増加していることを報告したが(ERJ 2005:25,Respirology2007:13),これらのバイオマーカーが呼吸機能の予後予測因子となるかを検討した.【方法】COPD患者87名の安定期に,9つの血清バイオマーカー,フィブリノーゲンと,末梢血好中球数を測定した.採血時と,その後3ヶ月ごとに呼吸機能検査を実施した.観察期間は8.9±0.7ヶ月(6-26ヶ月)であった.1秒量の低下率が年間10%以上の症例を急速低下症例とした.【成績】COPD患者のうち,8名が急速低下症例であった.フィブリノーゲン,末梢血好中球数,血清MMP-9濃度は,非急速低下症例に比べて急速低下症例で有意に高値であった(順にp<0.001,p<0.05,p<0.005).年間一秒量低下率は血清CRP(p<0.05)とMMP-9濃度(p<0.005)と有意に相関していた.【結論】血清MMP-9濃度はCOPD患者において呼吸機能の予後予測因子の候補となることが示唆された.
ポスター・ミニシンポジウム
PP857 COPD患者における血中バイオマーカーの検討
井上 譲,川山智隆,岩永知秋,相澤久道
久留米大学内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門
【目的】COPDは肺疾患のみならず,全身的な合併症や併存症の多い疾患である.今回我々はCOPD患者の全身性血中バイオマーカーの検討を行った.【方法】対象はCOPD72例(stage I,n=26;stage II,n=23;stage III,n=16;stage IV,n=7)で,安定期に,気管支拡張薬吸入前後の肺機能検査と血中バイオマーである全身性炎症(CRP),栄養状態(総蛋白=TP,アルブミン=Alb,総コレルテロール=T-cho,中性脂肪=TG),糖尿病合併(HbA1c)および肺性心合併(BNP)を測定した.COPDの診断および重症度分類はGOLD2006に従った.【結果】COPD患者の平均値と基準値を比較した場合,TP,T-Cho,TGおよびHbA1cは変化がなかったが,CRP値およびBNP値は高値で,Alb値は低値であった.しかし,CRPやAlbはCOPDの重症度との相関は認められなかった.BNPは安定期(44.2±7.3pg/ml)においても健常者(16.8±1.8)に対しても有意に高値(p<0.0001)で,重症度に比例して高値になる傾向が認められた.さらにBNPは,COPD増悪時に上昇(86.9±16.0)することがわかった(p<0.0001).【考察】COPD患者の全身管理を行ううえで,BNP,CRPおよびAlb値は有用なバイオマーカーであると考えられた.
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第48回日本呼吸器学会学術講演会での腫瘍マーカー関連の演題
(2008年6月15日-17日、神戸コンベンションセンター)
<演題リスト>
肺癌診療における腫瘍マーカーの有用性
非小細胞肺癌におけるFDG-PETのSUV値と血清腫瘍マーカーとの相関解析
胸腺癌における腫瘍マーカーの検討
胸腺上皮性腫瘍の鑑別における腫瘍マーカーの有用性
ポスター・ミニシンポジウム
MS186・PP507 肺癌診療における腫瘍マーカーの有用性
野崎 要,高山浩一,内野順治,原田大志,中西洋一
九州大学胸部疾患研究施設
肺癌診療において腫瘍マーカーは,診断過程や治療後の効果判定,術後再発の経過のモニタリングとして広く利用されている.しかしながら,良性疾患でも異常高値を示す場合があるため結果の解釈には慎重を要する場合がある.本研究では肺癌症例および肺癌と鑑別を要する良性疾患における各種腫瘍マーカー値を調べ,肺癌診療における同マーカー測定の有用性について考察した.1994年1月から2005年3月に九大病院で入院精査を受けた肺癌1392例,および肺癌との鑑別を要した良性疾患616例を対象とした.腫瘍マーカーは治療開始前にCEA,SCC,CYFRA,NSE,ProGRPの5種類を測定した.マーカーによってばらつきがあるが良性疾患であっても15~36%で従来のカットオフ値を超えていた.一方,カットオフ値を5倍にすると疑陽性率は3%未満に低下した.間質性肺炎症例では全ての腫瘍マーカーで増加傾向を示した.肺癌症例については組織型との関連があり進行期では有意に上昇したが,早期癌の診断においてはその有用性は乏しかった
ポスター・ミニシンポジウム
PP534 非小細胞肺癌におけるFDG-PETのSUV値と血清腫瘍マーカーとの相関解析
松本慎吾1),澄川 崇1),武田賢一1),井岸 正2),上田康仁1),中崎博文1),橋本 潔1),中本成紀1),重岡 靖1),陶山久司1),渡部仁成1),石橋 愛3),田邉芳雄3),清水英治1)
鳥取大学呼吸器・膠原病内科1),鳥取大学地域医療講座2),鳥取大学放射線科3)
【背景と目的】癌細胞の糖代謝活性を表すFDG-PETは,癌組織の機能的情報を評価する画像検査であり非小細胞肺癌の病理学的,生物学的な多様性を反映する可能性がある.そこでFDG-PETのSUV値と,個々の癌の特性を示す指標の一つである血清腫瘍マーカーとの相関を解析した.【方法】当院で2007年4月から9月の間にFDG-PET検査を施行した非小細胞肺癌28例(腺癌20例,扁平上皮癌5例,大細胞癌2例,他1例)を対象とした.FDG-PETのSUVmax値と,FDG-PET検査とほぼ同時期の腫瘍マーカー値(CEA,CYFRA,SLX,SCC,KL-6)との相関を統計学的に解析した.【結果】組織型で比較すると腺癌に比べて扁平上皮癌で有意にSUVmax値が高かった(t検定,早期p=0.03,後期p=0.03).腫瘍マーカーとの相関解析では,SUVmax値はKL-6値と正の相関を示し(Pearsonの相関係数,早期0.61,後期0.64),その他の腫瘍マーカー値とは相関を認めなかった.【考察】KL-6がII型肺胞上皮細胞で発現することから,この細胞の性格を有する癌では糖代謝活性が高いことが示唆された.
ポスター・ミニシンポジウム
MS357・PP974 胸腺癌における腫瘍マーカーの検討
吾妻俊彦1),小泉知展1),安尾将法1),山本 洋1),漆畑一寿1),花岡正幸1),藤本圭作1),久保惠嗣1),高林康樹2),蜂谷 勤2)
信州大学内科学第一講座1),諏訪赤十字病院呼吸器科2)
【目的】胸腺癌は,その頻度が稀であるため標準的治療は確立しておらず,また胸腺癌における腫瘍マーカーを検討した報告も少ない.今回,我々は当科で経験した胸腺癌25例の腫瘍マーカーについて検討した.【対象】1996年4月~2007年4月に当科および関連施設で経験した胸腺癌25例を対象とし,CEA,SCC,CYFRA,NSE,pro-GRPについて検討した.症例は男性15例,女性10例で,年齢は28~79歳(平均58.2歳).臨床病期分類(正岡)IVa期12例,IVb期13例.組織型は扁平上皮癌18例,未分化癌5例,小細胞癌1例,大細胞神経内分泌癌1例であった.【結果】扁平上皮癌における各腫瘍マーカーの陽性率は,CEA 0%(0/14例),SCC 21.4%(3/14例),CYFRA 60.0%(6/10例),NSE 30.0%(3/10例),pro-GRP 0%(0/7例)であった.未分化癌ではCEA 25.0%(1/4例),SCC 0%(0/2例),CYFRA 66.7%(2/3例),NSE 100%(4/4例),pro-GRP 50.0%(1/2例)であった.小細胞癌例及び大細胞神経内分泌癌例ではNSEが陽性であった.【結論】胸腺癌においてCYFRA,NSEは陽性率が高く,有用な腫瘍マーカーになる可能性が示唆された.
ポスター・ミニシンポジウム
MS360・PP983 胸腺上皮性腫瘍の鑑別における腫瘍マーカーの有用性
鈴木恵理子,棚橋雅幸,森山 悟,羽田裕司,吉井直子,丹羽 宏
聖隷三方原病院呼吸器センター外科
【目的】画像上胸腺癌と胸腺腫の鑑別は困難であることが多い.腫瘍マーカー―(CEA,SCC,CYFRA,ProGRP)がその鑑別に有用であるか検討した.【対象】1997~2007年までに腫瘍マーカーを測定した胸腺上皮性腫瘍33例(胸腺腫18例,胸腺癌15例).【方法】治療開始前に腫瘍マーカーを測定した.【結果】胸腺腫:男性9例,女性9例.平均59.2歳.I期6例,II期9例,III期2例,IVa期1例,WHO分類typeA:1例,AB:4例,B1:4例,B2:7例,B3:2例.胸腺癌:男性12例,女性3例,平均65.1歳.II期3例,III期4例,IVa期3例,IVb期5例.扁平上皮癌7例,非角化型類表皮癌3例,未分化癌2例,類基底細胞癌1例,低分化腺癌1例,小細胞癌1例であった.腫瘍マーカー値ではCYFRAが胸腺癌群の73.3%において高値で,全例正常値であった胸腺腫群との間に有意差を認めた(p<0.05).CEA,SCC,ProGRPにおいては両群間に有意差を認めなかった.【考察】胸腺癌症例では有意にCYFRAが上昇しており胸腺癌と胸腺腫の鑑別に有用であると思われた.
(2008年6月2日)
Fighting Cancer -- and Now Inflation Too
The American Society of Clinical Oncology's annual meeting is going on, and this Wall Street Journal article reports on warnings from speakers there that "five years of flat federal funding of cancer research is threatening to undo major strides made against the disease." ASCO President Nancy Davidson pegged the actual funding loss, thanks to inflation, at $500 million. The story quotes her as saying, "A hundred Phase I and Phase II clinical trials have been postponed, and the number of people able to participate in clinical trials has been reduced by 3,000."
(Genome Technology Online)
(2008年6月2日)
Genetic mutation will narrow target cancer groupe
The K-ras gene is coming in for some star treatment at the ASCO meeting in Chicago. The gene plays a key role in several cancers, and new research indicates that the common genetic mutation makes Erbitux useless for slightly more than a third of all patients who may currently qualify for the drug.
The Wall Street Journal notes that the genetic signpost is helping R&D teams design clinical trials for new cancer drugs, using the genetic information to help them identify patients most likely to respond. The developers will benefit by increasing their shot at producing statistically significant data but will likely have to scale back the potential size of their market--a trade-off that payers in the U.S. will be glad to see.
(FierceBiotech 2008年6月2日付けより)
Genetic Research May Help Pick Patients' Best Cancer Drugs (The Wall Street Journal)
By Ron Winslow and Marilyn Chase
Word Count: 1,248 | Companies Featured in This Article: ImClone Systems, Bristol-Myers Squibb, Merck KGaA, Pfizer, AstraZeneca, Genentech, Amgen
CHICAGO -- New genetic research emerging from a major cancer meeting here could help doctors better identify the drugs most likely to work in their patients -- but sharply reduce the market for certain blockbuster cancer drugs.
The research, presented at the annual meeting of the American Society of Clinical Oncology, highlights an important shift in cancer treatment and in attitudes of pharmaceutical and biotechnology companies toward "personalized medicine," in which treatment is tailored to an individual based on his or her genetic makeup. Companies are beginning to accept a smaller market for some medicines in return for a better ...
(2008年6月3日)
治療法 : 保護を予約 (Nature誌より)
Nature Reviews Cancer 8(6), (Jun 2008)
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放射線治療の有害な副作用は主に、造血系および/または消化管に起こる大規模なアポトーシスとして認められる。そのため、治療に当たっては照射線量が制限される。GudkovとFeinsteinらは、アポトーシスを抑えるために腫瘍細胞で変異したシグナル経路を応用し、放射線治療の線量の増量が可能な(ひいては治療の奏功率の上昇も期待される)放射線防護剤の探索を大きく前進させる研究成果を発表した。
転写因子NFκ【特殊文字カッパ】Bが活性化すると、腫瘍細胞のアポトーシスに対する感度が低下する。そこで、GudkovとFeinsteinらは、NFκ【特殊文字カッパ】Bの活性化により正常組織も放射線のダメージから保護されるかを検討した。NFκ【特殊文字カッパ】B活性化を引き起こすToll様受容体5(TLR5)作動因子のフラジェリンをマウスに注入し、その30分後に致死量の全身放射線照射(TBI)を行ったところ、生存率が有意に高まることがわかった。線量修飾係数(動物の50%が死亡する線量の放射線を照射したときの、薬剤未処理群に対し処理群の生存がどのように変化したかを示す値)は1.6で、現在、臨床使用されている放射線防護剤よりも高かった。GudkovとFeinsteinらはさらに、上記と同程度の活性および安定性をもつ免疫原性のあるフラジェリンの誘導体、CBLB502を作製してサルに投与し、致死量の放射線を照射しても生存率が高まることを示した。ただし、放射線治療では通常、分割照射を行なう。そこで、TLR5+腫瘍担持マウスに致死線量での分割TBIを実施したところ、CBLB502の前投与によって、放射線による死亡を完全に回避することができた。重要なことに、腫瘍は、NFκ【特殊文字カッパ】B、TLR5および/またはその下流経路が頻繁に脱制御を受けるためか、放射線によるダメージを避けられなかった。このことは、CBLB502が有望な放射線防護剤となりうる、強力な証拠である。
では、放射線防護作用はどのようにしてもたらされるのだろうか。CBLB502で処理して放射線照射したマウスの小腸粘膜固有層を調べたところ、アポトーシスを起こした細胞の割合は低く、小腸陰窩の幹細胞および造血幹細胞と前駆細胞はダメージから保護されていた。また、粘膜固有層では、スーパーオキシドジスムターゼ2のようなNFκ【特殊文字カッ】B標的遺伝子の発現レベルが、放射線防護作用が知られているサイトカイン(GCSF、IL6およびTNFα【特殊文字アルファ】など)の発現と同様に増加していることが明らかになった。このことから、CBLB502は、TLR5依存性NFκ【特殊文字カッパ】Bの活性化をはじめとする多くの機序を通じて放射線感受性組織の細胞充実性や形態を保ち、放射線によるダメージを防御していることがわかる。
次に問題となるのは、特に放射線治療によるDNA損傷の存在下で、薬理学的に模倣した抗アポトーシス経路に発がん性があるかということである。しかし、腫瘍が発生しやすいTrp53-/+マウスモデルをCBLB502で前処理し、致死量未満のTBIを実施しても、腫瘍の発生率および発生頻度が高くなることはなかった。また、CBLB502を投与され、致死量のTBI実施後の生存マウスも、6か月後に腫瘍発生の兆しはみられなかった。以上のことから、CBLB502は、腫瘍に関連する共通の生存機構の活性化によって正常組織を放射線から効果的に保護している可能性があり、これが放射線治療の治療係数を高めると考えられる。
doi:10.1038/nrc2406
実験医学増刊号 Vol.26 No.10 『RNAの機能解明と医療応用』
FANTOMをはじめとする国内外の大規模プロジェクトによって,予想以上に多くのゲノムの領域が転写されていることが判明し,哺乳類のトランスクリプトームの複雑性の全貌が見えてきた.一方でmiRNAなどの機能性RNAは,遺伝子発現調節機構として,その生理学的意義が確立した.この複雑で大規模な哺乳類トランスクリプトームを称して「RNA新大陸」と呼ぶ.その生理学的な意義の解明には,機能性RNAの作用機序に加え,RNAの異常による疾病の発症機構を理解することが助けとなる.本書はそうした哺乳類トランスクリプトームから,miRNAの分子機構,RNAと疾病へと進み,最終的には臨床におけるRNA研究の最前線を概説する.
このように基礎から臨床までを網羅する形でRNAについて検討した解説書はあまりないと思われる.科学史的な見地から本書を見ると,臨床に近い内容についてはむしろ伝統的な分子生物学の知見や有機化学の技術に立脚する部分が多く,1章のように基礎的な部分はより革新的な技術や知見によって支えられている.もちろん,4章-3を読めば,臨床医学においてもひらめきが重要なことは明白だが.このことは,臨床医学が人命に直結するきわめて重要な学問であり,「時の試練」を生き延びた普遍的な知見に立脚していることを示す.一方で,基礎研究のbreakthroughは方法論開発がその主たるdriving forceであることを物語っている.本書の1章や2章で紹介された知見が「時の試練」を超え,難病に苦しむ人々の福音に
なるような臨床応用へとつながることを切に願い,本稿を終えたいと思う.
<目 次>
概論 RNA新大陸とその臨床的意義
【第1章 哺乳類トランスクリプトーム解析とRNA新大陸】
マウストランスクリプトーム総論/ENCODEプロジェクトとゲノムネットワークプロジェクトの展望/RNA研究から見えてきた転写制御ネットワーク/CAGE(cap analysis of gene expression)法/次世代シークエンサーによるRNA研究の新展開/タンパク質-RNA相互作用の解析技術
【第2章 機能性RNAの生理学】
miRNA概論:最近の知見/miRNAとsiRNAの生化学/RNAヘリカーゼが媒介するmiRNAとrRNA生成/宿主/病原体相互作用/piRNAとPiwiの生殖系列細胞における機能/X染色体不活性化を制御するFunctional Non-coding遺伝子/核内mRNA型non-coding RNA/神経幹細胞の生物学とnon-coding RNA/miRNAとエピジェネティクス/パラミューテーションとRNA/海外で進む重要研究課題(miRNAアトラス/神経系とmiRNA/免疫系と血液系のmiRNA/循環器系とmiRNA/non-coding RNA発現による下流プロモーターの抑制/ヒト超速進化RNAと脳機能/RNA修飾についての最新知見)
【第3章 RNAからみた疾病】
スプライシング機構異常と網膜色素変性/筋強直性ジストロフィー発症に関わるRNA結合タンパク質ファミリーの新しい機能/ミトコンドリア病におけるRNA/インプリンティングと non-coding RNA/RNA編集と関連する疾患/癌の発生と進展過程に関わるmiRNAの異常/テロメレースと癌
【第4章 医療応用をめざすRNA研究】
miRNA発現プロファイル解析による癌の診断への応用/スプライソスタチン/転写後制御を標的とした遺伝子疾患治療/RNA医薬/米国におけるRNAアプタマーによる創薬の現状/RNA医薬の特許動向/RNAの合成と創薬
http://www.yodosha.co.jp/bs/9784758102919.html?ad=ymn

