バイオマーカー・トピックス No.6(2008・4・2)
「バイオマーカー・トピックス」は内外で発信される数多くのニュースや雑誌記事、論文などから適宜選んで、その要約やポイントを日本語で紹介するものです。
皆様の研究活動やビジネスに少しでも役立てばと願っています。
なお、翻訳はサイリックが担当しており、専門用語などは的確でない場合もあることをご容赦ください。また長文の場合はサイリックの判断で一部のみを紹介しています。正確なことは直接原典で確認してください。(多田 丞)
目次
Mood Disorders(気分障害)のためのバイオマーカーは精神治療法に変更を迫るかもしれない.. 3
バイオマーカーはHIV(エイズウィルス)の進行度を測定できるかもしれない.. 4
TBI(トラウマ性脳障害)のためのバイオマーカー
Banyan Biomarkers:LosAngels,USAのサイトより
http://www.banyanbio.com/biomarkers.php
バイオマーカーとは、CSF(顆粒球コロニー刺激因子)や血液、尿等の体液で発見される傷や病気特有の蛋白質あるいは細胞由来物質などを総称するものである。
これらの体液中にあるバイオマーカーの存在や量は抗体による分析によって同定でき、それを用いて傷害や病気の程度を評価でき、また回復程度などについても判定できる。
傷害や疾病に最もよい治療を選択するためには、体液中のバイオマーカーは病気等の状態に依存しているものでなければならないし、反対にそれらは正常な状態の場合は存在しないものでなければならない。
バイオマーカーの使用にとって重要なことは、非常に幅広いダイナミックレンジ(fg/ml~ug/mlのラフなレンジ)で決定できるような分析方法を用いることであり、分析システムは体液自体によって干渉を受けないことが必要である。
Banyan Biomarkers(LosAngels,USA)では同社が発見した42種類のバイオマーカーのうち標準となるものを同定しようと抗体を用いた分析を行っている。
現在、分析は改善されており、それらの特異性と感受性において有効になっている。
TBI(traumatic brain injury:トラウマ性脳障害)に関する有効なバイオマーカーの開発は、脳傷害患者の診断、管理および治療に重要なな影響を及ぼすであろう。
重症性傷害があった場合の正確な診断、つまり患者を直ちに入院させるべきか、しばらく様子を見るか、あるいは時間をかけて監視すべきかを判断しなければならない場合、高価でしばしば不正確であるCTやMRIに代わるもっと簡単な方法が重要となってきている。
また大きな事件や事故で多くの患者が発生したような場合において、現場が混乱していて的確な治療などが施せないような場合にも患者の優先順位を決めるのに簡便な診断方法が重要である。
単純で迅速な診断ツールは、TBIへの対処や事故・事件などでの脳傷害者の治療において、より専門的な治療施設を振り分けることにも寄与するであろう。
バイオマーカーは、TBIにおいては治療後も長期間にわたって苦しむ患者が(患者の)概ね80%を占めるとされるが、バイオマーカーによって予後のよりよい改善法を見つけることができるかもしれない。
これらの患者の正確な識別によって、仕事に復帰できる、スポーツもできるようになる、あるいはまた治療などの不足から病気に苦しむ患者のカウンセリングにも役立てられるように、回復用のガイドラインの開発に結び付けられるかもしれない。
バイオマーカーの開発は、TBI治療の発見にも重要な役割を果たすであろう。
さらに、これらのマーカーは、脳障害に対する潜在的な治療効果を評価するための臨床試験にも有用である。
<米国におけるTBIの患者数、医療費など>
TBIは、予後が悪い場合、患者は長期のリハビリなどが必要で破滅的な衰弱をもたらこともある疾病で、医学上の緊急課題となっている公衆衛生問題である。
「米国におけるTBI」と題するCDCレポートにおいて、アメリカでは少なくとも毎年140万人の患者が治療を必要としており、そのうち23.5万人(16.8%)が入院し、5万人(3.6%)が死亡している。また、110万人(78.6%)は治療を受け、救急科から救い出されている。
TBIは、最も一般的な神経学上の疾病の一つであり、主要な死因および能力喪失の原因となっている。
毎年のTBI発生率は、脳卒中患者(年間70万人)や乳癌患者あるいはHIV/AIDSの患者数よりはるかに大きい。
しかしながら、脳卒中患者の場合は65歳以上の患者が多いのに対して、TBIは青春期および中年期(最も大きな経済力を持っている年齢集団)にピークがあり、しかも全世代にわたっている。
脳傷害による肉体的、社会的、経済的等の苦痛は患者に生涯にわたる大きな負担を強いる。
TBIの直接の医学的コスト、およびTBIよって失われた生産力コストは、1995年では全米で563億ドル(約6兆円)規模に達すると見積もられた。
MTBI(mild traumatic brain injury ;脳震盪)は頭を強く打ったり、衝撃が加えられたような場合に起こり、混乱や見当識喪失、短期間の記憶喪失あるいは意識障害などの正常な精神状態に混乱を生じさせるものである。
MTBIは、多くのはっきりしない知覚障害などが起きるので構造的な脳の変化などをよく診断することが必要であり、現在そのための研究が進められている。
また、被害者の多くが傷害による潜在的な危険性や治療等の重要性を認識せず、医者の注意などを聞こうとしない傾向がある。
(2008年2月28日)
Mood Disorders(気分障害)のためのバイオマーカーは精神治療法に変更を迫るかもしれない
HealthDayニュースより
http://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=87486
気分障害に関連した血液中のバイオマーカーは、インディアナ大学医学部の研究者によって識別された。研究者らはバイポーラ型障害の診断及び治療法を変えることにつながるかもしれない、と言っている。
研究者は、96人の患者からの血液サンプルを分析し、患者の気分が高揚しているか沈んでいるによってバイオマーカーのレベルが変化している事を発見した。
彼らはさらにバイオマーカーの集中度が変化していること、それはうつ病または狂気の重症度、あるいは患者一人ひとりの経歴によっていることを発見した。
この研究をリードしている同大学医学研究所の神経科学科の准教授であるアレグサンダーB.ニクレスク博士(Dr. Alexander B. Niculescu)は「この発見は、疾病状態および治療の有効性を判断するための診断ツールにもっていける第一歩である。バイポーラ型障害やその他の精神障害状態が脳にある分子の変化によってもたらされることに精神病医は気づいているが、患者の生活において、それらの変化を診断する方法はまだありません。血液検査によってこの障害の重症度を分析し、評価することができるようになるだろう」と述べている。
彼は、この方法が分娩後のうつ病、外傷性(ポスト・トラウマティック)ストレス障害、死別の悲しみ等による気分障害の程度を幅広く判定・治療するために重要な影響をもたらすことができる、と述べている。
この研究は、分子精神医学2月26日のオンライン版(the Feb. 26 online issue of Molecular Psychiatry)で公表された。
<参考>
Mood Disorders(気分障害)
感情と欲動の障害を主徴とする原因不明の精神病. 抑うつへ変化したり高揚へ変化したりする. この気分の変化は, 通常全般的な活動性の変化を伴う. ほとんどは再発し, 個々のエピソードの発症にはストレス源がみられる. 一般的に病相期以外の間歇期には完全に正常な状態に回復する。(http://www2.ocn.ne.jp/~yosidamc/MDI.htm)
バイポーラⅠ型障害、バイポーラⅡ型障害
双極性障害はかつて躁鬱病と呼ばれていた。双極性障害には躁病エピソードと大うつ病エピソードの両方を伴う双極Ⅰ型障害と、より軽症の躁病エピソードと大うつ病エピソードが入れ替わる双極Ⅱ型障害がある。DMS-Ⅳ-TRにおいて双極性障害は現在この2種類に分類される。(「バイポーラ(双極性障害)の館」HPより)
(2008年3月28日)
バイオマーカーはHIV(エイズウィルス)の進行度を測定できるかもしれない
HealthDayニュースより
http://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=88247
テンプル大学の研究者は、エイズを引き起こすウィルスの進行を示すことのできる血液バイオマーカーを見つけたかもしれないと言っている。
「AIDS Research and Human Retroviruses」3月号に公表された研究によれば、研究者は、CD163+/CD16+モノサイト(単球)サブセットの増加がヒト免疫不全ウィルス(HIV)の進行と一致するかもしれないことを見つけた。
この研究の責任者である同大学の神経科学科教授のジェイ・ラパポートは「この発見はエイズウイルスの進行と相関関係があると推測される。特定の細胞タイプは免疫の悪化やHIVの進行に関係するかもしれない」と述べている。
(以下省略)
<研究所紹介>
㈱ハプロファーマ・沖縄研究センター
㈱ハプロファーマ(本社:徳島県徳島市南佐古7番町)は、徳島大学ゲノム機能研究センター長・教授 板倉光夫のゲノム創薬技術に基づき、大学発バイオベンチャーとして2004年3月に設立された。翌、2005年7月、同社の事業プランがバイオベンチャー企業研究開発支援事業(内閣府・沖縄県主宰)に採択され、その拠点として
2005年11月に沖縄研究センターが設立された。
所在地:沖縄県うるま市字洲崎12番75 沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター内
TEL:098-894-9027
現在、研究所では、同社が提案している「沖縄から発する健康長寿ビジネス」をベースに、活動を行っている。
「沖縄から発する健康長寿ビジネス」では、次の目標が掲げられている。
・ 沖縄の健康資源(ソフト・ハード)の発掘・開拓
・ 安全性・有効性の科学的レベルでの実証研究
・ あたらな健康サービスに提供するための
医薬品、食品、診断薬、漢方、癒し、美容法、運動法などの開発と臨床評価研究
・ 科学的な根拠に基づいた健康産業の支援
・ 沖縄からオキナワ式を数多く発信したい
「沖縄で構築する研究開発スキーム」として、次の諸点を挙げている。
シーズ探索
科学的評価・作用点探索
創薬標的・バイオマーカー、薬理評価研究
安全性・非臨床評価研究
上記のコンセプトを実現するため、現在、次のプロジェクトに取り組んでいる。
「長寿対生活習慣病(肥満)アプローチ」
・長寿と肥満
・健常人と疾患(予備軍)の比較解析
生活習慣、食生活、臨床検査、DNAデータバンク
・環境生活要因がDNAに及ぼす影響をチップで計測
「健康長寿バンクOKINAWA構想」
・ 若年・壮年男性の肥満者及び健康長寿者を対象とした高質臨床データを収集
・ 琉球大及び地域医療機関と連携して現在構築中

