バイオマーカー・トピックス No.4(2008・3・25)
目次
イリノイ大学の研究者ら、うつ病の生化学的指標(うつ病のバイオマーカー)を発見.. 1
AKI(重症性急性腎障害)の術後の進展を予測する新規でかつシンプルなマーカーを発見.. 2
ノーウエスタン大学C2S、2008年サマー・バイオマーカー研究所を開催.. 2
analytica 2008(2008年4月1-4日、ドイツ・ミュンヘン). 3
(2008年3月12日)
イリノイ大学の研究者ら、うつ病の生化学的指標(うつ病のバイオマーカー)を発見
Scientists Spot Biochemical Sign of Depression
By Randy Dotinga
HealthDay
Reporter
Wednesday, March 12, 2008; 12:00 AM
イリノイ大学シカゴ校の学際的研究組織・神経科学プログラムのディレクターである Mark Rasenickは、ある種の抗うつ薬が治療を前進させているかどうか決定するためにの迅速に実験室での検査に役立てられるバイオマーカーを発見したと発表した。
彼は「これはうつ病診断のために非常にシンプルな生化学的指標になる可能性がある」と述べている。
彼は、この検査は、ある「薬物治療」を始めるかどうかを決めかねているような場合に、その治療が効果があるかどうかを判断するのに役立つ情報を提供できるだろう。また、一連の精神療法(rounds of psychotherapyの選択が効果を得ることができるかどうかを決めるための検査にも使用できる可能性がある、とも述べている。
この研究は、「The Journal of Neuroscience 2008年3月号」に発表されたが、そこでは「現在は、この仮説はまだ保留の段階であり、さらに新しい発見のための研究が必要である」と述べられている。
うつ病などの診断においては、脳自体がうつ病の物理的あるいは化学的指標を示すかどうかが問題となっている。研究者らは、神経伝達物質と相互作用しているGsアルファという蛋白質を発見した。
研究の責任者であるラセニックは「この蛋白質は脳細胞において、神経伝達物質からのメッセージを評価し、かつそれらのメッセージを増幅する、つまり一種の執事のような働きをしている。この蛋白質が適切に働いている場合は、それは執事のように働いている、例えば、手が空間を動いて料理を行うと同時にその仕上げをするように(手助けする)働きを行っている。しかし、この蛋白質が低下している場合は、この執事は隅っこにじっとしていて働かなくなる」と説明している。(以下略)
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/11/AR2008031102528.html
(2008年3月12日)
AKI(重症性急性腎障害)の術後の進展を予測する新規でかつシンプルなマーカーを発見
New Test Predicts Risk of Post-Surgery Kidney Injury
Wednesday, March 12, 2008; 12:00 AM (HealthDay News)
シンシナティ小児病院医療センターのPrasad Devarajan博士、重症性の急性腎障害(acute kidney injury (AKI))の術後の進展を他の方法よりもいち早く予測できる新規でかつシンプルなテストをパイロット・スタディで見つけた、と発表した。彼は、この発見は同疾患の初期段階での診断や治療後の予後の改善などに役立てられる可能性があるといっている。この臨床試験は尿中の好中球ゼラチナーゼに関連するリポカリン2(neutrophil gelatinase-associated lipocalin:NGAL、別名24p3)というバイオマーカーを用いて診断する方法である。MGALは、AKIの早期の強力な予知的マーカーとして知られ、血清クレアチニンの増加―現在のゴールデンスタンダード―に先行する指標であり、数時間から数日で診断できる、と研究者は述べている。(以下略)
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/03/12/AR2008031202664.html
(2008年6月9-11日)
ノーウエスタン大学C2S、2008年サマー・バイオマーカー研究所を開催
2008 C2S Summer Biomarker Institute
June 9-11, 2008
Northwestern University
Evanston, IL
Download the 2008 Biomarker Institute brochure (PDF)
ノースウェスタン大学エヴァンストン校「社会的格差と健康センター」(The Center on Social Disparities and Health)の「Cell to Society」(C2S)は、今年も6月9-11日の3日間にわたって「2008年 Summer Biomarker Institute」開催輔計画で、現在、参加者を募集中である。
調査研究にバイオマーカーを組み入れることへの関心は非常に高まってきている。しかし、研究者らの多くは、これらには社会とバイオ医科学の両方の専門知識を必要とするということについて十分な訓練を受けていない状況にある。
当研究所は、バイオマーカーを自然界での生物学的計測と統合したコンセプトとテクニックに基づく、すなわち人口学(疫学)に基づく社会科学的研究とバイオマーカー手法を統合することについての研究機会を与えようと考えている。
Thomas McDade(人類学)、Emma Adam(人の進歩・成長とそのための社会政策)およびChtristpher Kuzawa(人類学)らがこのワークショップを取り仕切ることになっている。また、バイオマーカーの研究や応用に豊富な経験を有する多くの研究者によるプレゼンテーションも予定されている。
そにてこのサマー・バイオマーカー研究所の終了までには、参加者は各自の研究アジェンダのために特定のバイオマーカーを適応することについてや知識に基づいた決定を行うために必要とするツールを得ることができるようになるであろう。また、バイオマーカーに関する問題について連携(コラボレート)するための効果的なコミュニケーション能力についても学ぶことができるであろう。そして、従来の手法を越えることのできる革新的研究方法についても学ぶことができるであろう。
(以下略)
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.northwestern.edu/ipr/c2s/events/biomarkerapp.html
(2008年3月16日)
BERTHOLD TECHNOLOGIES、HTRF(マルチモード・マイクロプレートリーダー)Mithras LB 940.を発売
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.htrf.com/technology/htrfmeasurement/compatible_readers/berthold/
<展示会・シンポジウムなどの紹介>
analytica 2008(2008年4月1-4日、ドイツ・ミュンヘン)
バイオテク産業のプレゼンテーション・プラットホーム
analitica 2008は、ドイツ・オーストリアを中心とするバイテク・クラスター、特に分析科学、ラボ、バイオテクなどでの世界的なリーディングカンパニーのショーケースである。
analytica 2008は、2008年4月1-4日の4日間にわたってニュー・ミュンヘン貿易見本市センターで開催され、ドイツのバイオリージョンは「バイエルンInnovativ」、「BioM」および「Biotechnologiepark Luckenwalde」の3つの会場で集中的な展示を行う。
またオーストリアのバイテク・クラスターは、「ライフサイエンス・オーストリア」で共同の展示を行う。
詳細は下記のサイトをご覧ください。
http://www.bio-pro.de/en/life/veranstaltungen/03170/index.html
<研究所紹介>
慶應義塾大学先端生命科学研究所(IAB)

先端生命科学研究所は、2001年4月、鶴岡タウンキャンパス(山形県鶴岡市)に設置された本格的なバイオの研究所です。当研究所では、最先端のバイオテクノロジーを用いて生体や微生物の細胞活動を網羅的に計測・分析し、コンピュータで解析・シミュレーションして医療や食品発酵などの分野に応用しています。本研究所はこのようにITを駆使した「統合システムバイオロジー」という新しい生命科学のパイオニアとして、世界中から注目されています。
統合システムバイオロジーのパイオニア
慶應義塾大学先端生命科学研究所(Institute for Advanced Biosciences, IAB)は、最先端のバイオテクノロジーと ITを駆使した新しい生命科学のパイオニア的研究拠点として、2001年に設立されました。
当研究所の究極の目標は、有用な微生物や医薬品を人工的に「デザイン」し、環境・医療・食糧分野に応用する技術の開発です。そのために私たちは、以下のような研究モデルを提案します(研究紹介)。
メタボローム技術により細胞内の物質を網羅的かつ高速に測定・収集・解析する
解析データを統合してコンピュータ上に細胞モデルを構築してシミュレーションし、細胞活動の予測を行う
これらの結果に基づいて、ゲノム工学技術により新しい細胞を設計・創出する
このような融合研究を実現するために、IABには生物科学・分析化学・情報科学・ゲノム工学・代謝工学などの専門家が結集して密接なコラボレーションを進めています。最近では、ヒト赤血球のシミュレーションによる予測データをメタボローム解析技術によって実験的に実証するという、当研究所ならではの研究成果も生まれています(詳細)。
学部・大学院教育でも、バイオとITの両方を専門的に学ぶカリキュラムを用意し、次の世代のバイオ研究を担う人材育成に取り組んでいます(大学院教育について)(学部教育について)。
世界最大規模のメタボロームファクトリー
本研究所からスピンオフしたベンチャー企業、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT) は、メタボロミクスのリーディングカンパニーです。キャピラリー電気泳動質量分析計(CE-MS)によるメタボローム解析技術をベースに事業を展開し、各種バイオマーカーの開発に取り組んでいるほか、CE-MSを用いたメタボロミクスソリューションを提供し、多くの企業・研究機関との共同研究を進めています。HMTとの連携により、先端生命科学研究所を中心とした大規模なメタボロームクラスターが形成されています。
ごあいさつ 研究所長:冨田勝
日本社会は失敗を許さない雰囲気があります。だから確実に成果が見込まれる研究に優先的に予算をつける傾向があります。しかしそれではブレークスルーは出てこないし、若手がチャレンジする意欲を減退させてしまいます。
慶應義塾はこの研究所を「アカデミックベンチャー」と位置付け、失敗を恐れず未知の領域に果敢に挑戦し、新規先端技術の開発を積極的に推進します。本研究所は代謝工学や分析化学、そしてゲノム工学などの実験グループを擁する本格的なバイオの研究所ですが、コンピュータシミュレーションなど ITの最先端技術をメインに位置付けることによって、「IT主導のバイオサイエンス」という新しい生命科学のパラダイムの確立を目指します。
最先端の学問分野においては、教授も学生と一緒に勉強しなければなりません。本研究所では福澤諭吉の「半学半教」の精神に基づき、年功序列的な雰囲気を一掃します。世界の誰も挑戦したことのないプロジェクトに、教授、若手研究者、学生が一体となって取り組み、共に成功を喜び、共に失敗を悲しみ、共に学び、時には語り明かす時、日本で忘れかけてきた「サイエンスの楽しさ」が蘇えることでしょう。
また、都市圏に集中する傾向のある日本のアカデミズムにおいて、自然豊かな郊外でこそ豊かな発想を育む、という欧米型キャンパスをめざして山形県にキャンパスを開設したことも慶應義塾のチャレンジと言えましょう。ビーチまで15分、スキー場まで30分という鶴岡の豊かな自然を背景に、私達は日本のサイエンスのあり方を一新することにも挑戦していきます。
最終更新日 ( 2007/06/08 金曜日 07:42:12 JST )
<バイオマーカー関連の研究について>
(08.01.11)
メタボローム解析でアルツハイマー病診断法の開発へ
山形県鶴岡市の慶應義塾大学先端生命科学研究所(冨田 勝所長)と愛知県大府市の国立長寿医療センター研究所(田平 武所長)の滝川修省令室長のグループは、メタボローム(生体内代謝物の総称)測定法を用いて、アルツハイマー病など認知症の新規診断用バイオマーカーの探索研究に着手することを発表しました。
(06.4.12)
メタボローム解析で急性肝炎のバイオマーカーを発見
慶應義塾大学環境情報学部・先端生命科学研究所の冨田勝学部長、曽我朋義教授らと慶應義塾大学医学部医化学教室の末松誠教授の研究グループは、新規に開発したメタボローム(細胞内の全代謝物の総称)測定法を用いて、アセトアミノフェンによって引き起こされる急性肝炎の血中バイオマーカーを発見しました。アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使われていますが、大量摂取すると劇症肝炎を誘発することが知られており、米国では毎年100人以上がアセトアミノフェン中毒で死亡しています。
先端生命研で開発したキャピラリー電気泳動-質量分析計(CE-MS)によるメタボローム解析技術は、細胞から一度に数千個の代謝物質の分析を初めて可能にするなど、世界的な注目を集めています。今回、従来法に比べ数倍以上の高感度化と数十倍の高速測定を可能にしたキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)を開発しました。またメタボローム測定で得られた膨大なデータの中から変動のある代謝物を瞬時に探索するソフト(名称:メタボロームディファレンシャルディスプレイ)を開発しました。これらの新規メタボローム解析技術を用いて、アセトアミノフェンをマウスに過剰投与し、肝臓細胞内と血液中の代謝物質の変動を網羅的に測定したところ、劇症肝炎発症時に、薬物に対して解毒作用を持つグルタチオンの枯渇に伴い、ある物質が肝臓細胞内および血液中で急増していることを発見しました。
慶大グループは、この物質がオフタルミン酸であることを特定しました。また、グルタチオンの減少によってグルタミルシステインシンセターゼという酵素が活性化し、オフタルミン酸が生合成されるメカニズムも解明しました。肝臓中で増加したオフタルミン酸は血液中に瞬時に輸送されるため、血中のオフタルミン酸濃度も急上昇することも見つけました。このバイオマーカーがヒトでも確認できれば、血液中のオフタルミン酸濃度を測定することにより、薬物による急性肝炎や酸化ストレス病態の早期の診断が可能になります。
これは文部科学省リーディングプロジェクトの細胞・生体機能シミュレーションプロジェクトの研究成果であり、米国生化学分子生物学会誌 Journal of Biological Chemistry電子版に4月11日掲載されました。
曽我教授は、「ここ数年、世界中の医学、製薬の研究機関、企業がバイオマーカーの発見にしのぎを削っているが、新しいバイオマーカーはほとんど発見されていない。私たちが開発したメタボローム解析法はバイオマーカー探索においても非常に有用な技術であることが証明できた。今後、このCE-TOFMS法が低分子バイオマーカー発見の強力な手段になるはず。」と話しています。
また、末松教授は、「今回の成果にはメタボロームの膨大な測定情報を効率よく解析して、研究者に視覚的に本質を伝えるメタボロームディファレンシャルディスプレイなどのユーザーインターフェイス技術開発に関するブレイクスルーができたことの貢献が極めて大きく、分析化学、生化学、医学、コンピュータサイエンスの異分野融合学際プロジェクトの成果になった。」と語りました。
このニュースは下記のメディアでも報道されました。
・Biotechnology Japan「慶應大学、メタボローム解析で消炎鎮痛剤が誘導する急性肝炎のマーカー発見」
・山形新聞 4/13 20面
・荘内日報 4/14 1面
・日刊工業新聞 4/17 8面
・朝日新聞 4/18夕刊 3面


