バイオマーカー・トピックス No.5(2008・3・28)
目次
アスラジェン(Asuragen)、FFPEサンプルのプロファイリングのための新しいアッセイシステムを来月発表 1
プロテイン・バイオマーカー診断(Protein Biomarker Diagnostics)はまだまだ地味な努力を要する 2
タンパク3000プロジェクトの産んだもの 「特集にあたって」. 2
アジレント・テクノロジー、新しいプロテオミクスウェブサイトを備えたLC/MSライフサイエンス・ワークフローを拡張 4
NCI(米国国立癌研究所) 「Tumor Markers: Questions and Answers」. 4
(2008年3月25日)
アスラジェン(Asuragen)、FFPEサンプルのプロファイリングのための新しいアッセイシステムを来月発表
米国テキサス州オースチンにあるアスラジェン社は、FFPE(ホルマリンで固定したパラフィン包埋)の実験サンプルを使用して、バイオマーカーの探索を行っている研究者が高い関心を示すと思われる新しいアッセイシステムを来月発売する予定である、と発表した。同社ではこの新しいアッセイは、これまでFFPEサンプルを使った実験系では、しばしば信頼性にかけるデータしかえられなかったものを改善できる、と言っている。
(bioArray news)
(2008年3月20日)
プロテイン・バイオマーカー診断(Protein Biomarker Diagnostics)はまだまだ地味な努力を要する
米国ヒトプロテオーム機構(US Human Proteome Organization)の年次総会において、PPI(Plasma Proteome Institute, Washington DC)のCEOであるリー・アンダーソン(Leigh Anderson)が演説し、プロテイン・バイオマーカー診断の現状は人々が期待していたところからはまだ遠いところにあり、診断薬パイプラインの開発もまだ初期段階にある、と述べた。
(Proteo Monitor)
(2008年4月1日付け)
タンパク3000プロジェクトの産んだもの 「特集にあたって」
中村春木・月原富武
(『蛋白質核酸酵素』2008年4月号)
2002年4月から5年間の規模で実施された文部科学省の“タンパク3000プロジェクト”が2007年3月で終了した。このプロジェクトは、2001年9月に総合科学技術会議が研究開発目標のひとつとして定めた“蛋白質構造・機能解析”を具体化し、30%以上の配列相同性をもつ蛋白質集団として定義される“ファミリー”の代表構造(当時は、ファミリーの総数は1万個程度と推定されていた)を国際協力によって決定するため、その3割程度の寄与(1万個の3割で3000個の構造決定を行う)を目標とした国家プロジェクトである。
この5年間のプロジェクトに投資された研究費の総額が535億円という生物学系の研究費としてはこれまで例がないほど巨額であったこと、生命科学の広い分野の中において“構造生物学”という比較的限定された分野が対象とされたこと、理化学研究所と大学の双方の研究者によってそれぞれ異なる課題が設定されたこと、さまざまな状況があったこともあり、そのプロジェクトのミッションの是非、成果の価値、課題の決定手続き安い新体制についても、多くの議論がなされている。
既に2007年9月m492ページに及ぶ分厚い研究報告書がWeb上で公開されていて(http://www.mext-life.jp/protein/evaluate2007/)、原理的には誰でもその成果について知ることは可能である。しかし、個々の研究の詳細は別途発表されている原著論文に掲載されていて、報告書だけからはその価値をうかがい知るのはむずかしい。解析された蛋白質の構造数は、報告書によると4500をこえており、PDBデータベースに登録されたものだけでも3900をこえているとされる。この中には、生物学的にきわめて重要な新規の蛋白質構造や核酸などとの複合体もあれば、機能解析のためには重要ではあるが新規な構造とは言いがたい変異体の構造も含まれている。
解析された構造の数が多いだけに、ある部分のみを捉えて評価をすると、成果を過小評価したり、逆に、過大評価をしたりするおそれがあり、研究成果を俯瞰的に理解することが容易でないこともあって、ともすると議論は一方通行になりがちである。
この特集では、まず、“タンパク3000プロジェクト”を実施した研究者自身から、構造生物学以外の分野の読者にも研究成果をわかりやすく紹介していただく。個別的解析拠点(大学拠点)からは、生命科学の基礎分野だけでなく医学、工学や薬学などの応用分野にも役立つ成果としてどのようなことが解明されたのか、という生命科学に与えた寄与が記述される。一方、網羅的解析拠点(理化学研究所)からは、構造ゲノム科学としてのミッションと、それがどのように達成されたのかが主に記述される。このように、成果報告書からはわかりにくい具体的な成果を紹介することを第一の目的としている。
また、“タンパク3000プロジェクト”でどのような構造がどれだけ解析されたのか、という統計的解析をあらためてバイオインフォマティクスの専門家が実施し、統一的な定義によって個々の研究グループによる定義のブレを省いた統計をとり、客観的な数値を読者に提供することが第2の目的である。構造から機能が新たに推定できたと思われる例についても紹介している。
以上、プロジェクトを推進した研究者側からの記事を第Ⅰ部とし、それとは独立に、第2部として、国内外の構造生物学の専門家からのコメントをいただき、プロジェクトに対する意見を掲載して問題点をより明確にすることが第3の目的である。
≪タンパク3000プロジェクトの構成。構造数、費用、研究グループ≫
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研究拠点 |
研究代表者 |
構造数 |
研究費(億円) |
研究に参画した研究所・大学 |
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網羅的解析プログラム |
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理化学研究所ゲノム科学総合研究センター |
横山茂之 |
2675 |
333 |
複数の研究所、大学との共同研究 |
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個別的解析プログラム |
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東京大学大学院農業学生命科学研究科 |
田之倉 優 |
228 |
18 |
三菱化学生命科学研究所、東京薬科大学、日本医科大学、愛媛大学、群馬大学、九州大学、山口大学 |
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北海道大学大学院先端生命科学研究科 |
田中 勲 |
257 |
17 |
産業技術総合研究所、法政大学、東京大学、新潟大学、国立遺伝学研究所、大阪大学、九州大学、熊本大学、東京工業大学、筑波大学、神戸大学 |
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横浜市立大学大学院国際総合科学研究科 |
西村善文 |
203 |
15 |
富山大学、東京大学、京都大学、名古屋大学、愛媛大学、熊本大学 |
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高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 |
若槻壮市 |
254 |
18 |
大阪大学、京都大学、理化学研究所、長岡技術科学大学、東京大学、名古屋市立大学、昭和大学、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所、奈良先端科学技術大学院大学、東京工業大学、東京都老人総合研究所、鹿児島大学、京都産業大学 |
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京都大学大学院理学研究科 |
三木邦夫 |
226 |
16 |
大阪大学、北海道大学、東京農工大学、名古屋大学、東京工業大学、東京大学、九州大学、日本原子力研究開発機構、富山大学、兵庫県立大学、京都工芸繊維大学 |
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北海道大学大学院薬学研究科 |
稲垣冬彦 |
116 |
14 |
SAILテクノロジーズ㈱、奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、九州大学、自然科学研究機構 |
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大阪大学大学院蛋白質研究所 |
中川敦史 |
297 |
14 |
名古屋大学、東京大学、徳島大学、岡山大学、兵庫県立大学、関西学院大学、広島大学、奈良先端科学技術大学院大学、愛媛大学、北里大学 |
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大阪大学大学院理学研究科 |
倉光成紀 |
261 |
20 |
産業技術総合研究所、大阪市立大学、東京大学、東京工業大学、電気通信大学、徳島大学、名古屋大学、香川大学、広島大学、岡山大学、長崎大学、京都大学、筑波大学、福井県立大学、徳島文理大学、九州大学、九州工業大学、高知大学、東北大学、癌研究会 |
(以下略)
(2008年3月20日)
アジレント・テクノロジー、新しいプロテオミクスウェブサイトを備えたLC/MSライフサイエンス・ワークフローを拡張
アジレント・テクノロジーは、プロテオミクス研究者に有用な新しい資源を供給するため、最新の装置、ソフトウェア、およびワークフローに関連する情報を提供するwww.proteomics-lab.comの着手を発表した。
同サイトは、バイオマーカーの発見、蛋白質識別、定量的プロテオミクス、多糖類や糖の蛋白質分析、リン蛋白質分析及びなどを含む共通のプロテオミクスおよび完全な蛋白質分析を含むプロテオミクス解析のオーバービューを提供する。
さらに、それは、最新のポスター、アプリケーションのための技術的ノート、ビデオ、イベント、プロモーション等へアクセスを可能にし、また、サンプル準備や分析を最適化するために設計された革新的なアジレント製品に関する情報を提供する。
詳細は下記のサイトをご覧ください。
NCI(米国国立癌研究所) 「Tumor Markers: Questions and Answers」
<キーポイント>
●腫瘍マーカーとは、癌患者において、患者の血液、尿あるいは生体組織中で異常な量を検知できる物質のことをいう。
●異なる腫瘍マーカーは異なるタイプの癌で検出される。
●腫瘍マーカーは癌を分析するか、患者の特別の治療に対する反応を予測するか、患者の治療に対する応答をチェックするか、あるいは癌が再発したかどうかを判定するのを支援するために使用される。
●一般に、腫瘍マーカーは癌を分析するために単独で使用することができない。それらは他の臨床検査と結びつけて判断しなければならない。
●研究者は、腫瘍マーカーを研究し、癌を検知し、分析し、モニターする、より正確な方法を開発することを続けている。
1.腫瘍マーカーとは何ですか
・腫瘍マーカーは、癌あるいは良性の腫瘍(非癌)の状態に応じて、腫瘍細胞によって、あるいは身体の他の細胞によって産生される特定の物質である。
・これらの物質は、血液、尿、腫物組織、あるいは他の組織中で見つけることができる。
・癌の種類などによって異なる腫瘍マーカーが見つかる。また、同じ腫瘍マーカーでも一つの癌のタイプを超えて、多くのタイプの癌で異なるレベルを示すことがある。
・さらには、特に癌が初期の段階である場合、腫瘍マーカーレベルは癌を持ったすべての人々の間で変割ることはない。
・また、いくつかの腫瘍マーカーのレベルは、癌でない腫瘍を有する患者の間でも同じである場合もある。
・現在まで、研究者は、いくつかのタイプの癌において異常を示す多くの物質を同定している。
・これらの物質のうちのいくつかは、他の身体条件や疾病でも見つかることがある。
・腫瘍マーカーは、まだまだすべてのタイプの癌で見つかっているわけではない。
2.リスクマーカーは何ですか。
・多くの人々は、特定の遺伝子の中において遺伝子の突然変異あるいは遺伝子変化等として知られている遺伝子の変更によって、あるタイプの癌を発症しやすいことがわかってきている。
・そのような変異や変化は、しばしばリスクマーカーと呼ばれている。
・リスクマーカーに対する検査は、ドクターが患者が癌になる可能性が高いかどうかを評価・診断するのを助けることができる。
・リスクマーカーは癌を発症しやすいかどうかを示すことが可能である一方、腫瘍マーカーは癌(細胞)があるかどうかを示すものである。
(以下、続きは次号)
<研究所紹介>
㈱バイオマーカーサイエンス/京都桂研究所
所在地:京都市西京区御陵大原1-36 京都桂ベンチャープラザ
<設立経緯>
2002年12月に大阪商工会議所の企画により「機能性 食品開発研究会」が組織され、吉川敏一教授(京都府立医科大学)が座長となり91社の企業の参加を得て、「機能性食品」の疾病予防機能評価についての報告研究会が開催された。さらに同教授らは、日本において「機能性食品」の疾病予防機能の評価方法を開発するベンチャー企業を即時に立ち上げることが必要であると考え、大澤俊彦教授(名古屋大学)や荒井綜一教授(東京農業大学)の賛同も得 て、同年、㈱バイオマーカーサイエンスを設立した。
同社の研究所として、2003年11月に横浜に研究所を設置。その後、2005年1月、(独法)中小企業基盤整備機構が設立した公的インキュベータ「京大桂ベンチャープラザ」に横浜研究所を移し、「京都
桂研究所」とした。
<主な研究内容>
先進のゲノミクスやプロテオミクス技術を導入し、バイオマーカーの探索から精製・同定までを中心的に行っている。
ゲノミクス研究にはマフィメトリックス社のGeneChipシステムを利用して網羅的な遺伝子解析を行っている。
プロテオミクス技術を用いたバイオマーカー探索には、SELDI-プロテインチップシステム(サイファージェン社)を利用して網羅的なプロテオーム解析を行い、検出感度・分解能の高いバイオマーカーの発見を目指している。
SELDI-プロテインチップシステムとは
タンパクのような巨大分子の測定が可能なMALDI-TOF-MS法を更に発展させたもので、特殊処理を施した金属のチップを用いることにより、タンパクを定量的に検出できる質量分析システムである。このシステムを用いることにより、従来では不可能だった微量タンパクの定量的な検出が可能になるため、生体内での微量タンパク発現量の違いを比較し、精度の高いバイオマーカー探索が可能になった。
<京都桂研究所の開設に関する新聞記事>


