遺伝子をグーグルする―そして未来へ―(『Google誕生』の第26章)
最近、グーグルを主題とする書籍がたくさん出版されているが、その一冊でグーグルを誕生させた二人の若者ラリー・ぺイジとサーゲイ・プリンの理想・アイディア・行動と未来を書いた「Google誕生」(デビッド・ヴァイス/マーク。マルシード著・田村理香訳、イースト・プレス社刊)が面白い。特に、第26章はGoogle(の二人)がこれからの遺伝子解析や応用分野に並々ならぬ情熱を注ぎ込もうとしていること、またその活用が如何に重要かについて書いている。その章の一部を紹介する。
●グーグルで病気の予防や治療ができる
・ サーゲイ・プリンとラリー・ペイジには、科学と医学とテクノロジーを融合させて、グーグルを生物学と遺伝学の分野へ進出させる、という野心的な長期的計画がある。二人の目標とは、さまざまな病気の予防と治療を行いながら、より健康的でより快適な毎日を過ごせるように、何百万人もの個人や科学者に情報を提供することである。
・ より優れた検索エンジンなど、そのための準備はグーグル内部ですでに始まっているが、「究極の検索エンジンは、検索者が言わんとしていることをその通り正確に理解して、求められたまさにその答えを提供する」とペイジはいう。
・ その重要な第一歩となる試みとして、人工知能の技術や言語翻訳の新たなメソッドの実験がグーグルプレックスの内部で行われている。
・ プリンとペイジは、グーグルのユーザー達は新しい情報の入った情報の宝庫のどこにでも自由にアクセスできるようになる、という展望を持っている。
・ この宝庫の中の情報は、公的なもの、私的なものだったりするが、インターネットではまだ手に入らないものもある。例えば、映画やテレビ、ラジオ番組、電話やそのほかの音声コミュニケーション、教育に関するもの、宇宙からのデータなどである。
・ グーグルのプロジェクトの中で最も心を躍らせるものの一つに、生物学と遺伝学にかかわる研究がある。これはいわゆる「オーダーメイド医療」につながるものであり、病気の治療が統計や平均によるものではなく、医師やカウンセラーが一人ひとりに適切な医療を施すことができるようになる。
・ NIH・ヒトゲノム研究所のA.E.ガットマッチャー副所長は、遺伝学へのグーグルの参入はと分け意義深いことだという。その理由として「グーグルには病気を引き起こす特定の遺伝子や遺伝的異常を検索し、発見する能力があるからだ」と述べている。
・ ガットマッチャー所長は「データを系統付けて、それを数値化するのが一番手間がかかる。これには、グーグルが検索に使っているような方法が有効だ。我々は、かつては考えもしなかった方法で人間の病気の生態を理解させる、信じられないようなツールを手にしようとしている。このツールを使って、病気を予防したり治療したりする全く新しい方法を見つけ出そうとしている」と述べている。
●遺伝子研究、生物学、宇宙開発、そして貧困救済にも役立てたい
・ 2005年2月、サーゲイは、グレイグ・ベンダー博士、DNAダイレクト社のCEOライアン・フェランらと、遺伝子とグーグルの展望について語り合った。ベンダー博士は「グーグルを(遺伝子などの)科学情報の保管庫にしたらどうだろうか」と話した。サーゲイは、知的好奇心をとても刺激された。
・ グーグルは既にスタンフォード大学と「タンパク質の折りたたみ構造を解読するプロジェクトを共同で進めている。タンパク質の折りたたみ構造を三次元画像でシミュレーションするには大変な努力を要する。この作業に登録されたボランティアたちのパソコンの空き時間を利用しているが、グーグルは検索ツールを使って登録作業を簡単に行えるように協力している。
・ サーゲイらは、ベンダー博士の提案を受けて、共同作業を開始している。ベンダー博士は「グーグルの膨大なコンピュータ能力と人材を使うことで、分子データの分析速度が増し、応用医療と基礎科学研究の両方でさらに重要な進展が見込まれるようになった。また、全ての生物の遺伝子カタログを作り上げる試みにも挑戦していける」と語っている。
・ ベンダー博士はさらに「やがて誰もがグーグルサイトにログオンして、自分自身について知ることができるようになるだろう。新しい情報がリアルタイムで入ってくるから、グーグルの検索機能を使えば、自分自身に関する最新の情報をいつでも手に入れることができるようになるだろう」と述べている。
●グーグルのない生活は考えられない―人間と検索エンジンがさらに近づく
・ エネルギー省のアリ・パトリノスもグーグルの大ファンでヘビーユーザーである。彼は「検索エンジンが魔法のように思えるのは、データベースの中をすばやく駆け巡り、それぞれの関係性を見出し、光のようにすばやく答えを出してくれるからだ。こうして提供される情報は、テクノロジー企業や産業生命工学、環境生命工学などの成長分野にこそ活用されるにふさわしい」と語っている。

