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ニューヨークタイムズの癌関連ニュース―癌発症のパスウェイの解明(2006年7月31日)

ニューヨークタイムズの特集記事によると、ジョン・ホプキンス大学のバート・ボーゲルスタイン、MITのロバート・ウエインバーグらは、我々は癌の全ての問題を解明するための武器を手に入れつつある。我々は、悪性腫瘍を創るのに必要とされるすべての癌細胞のリストを完成した。このリストは、細胞が癌へと進展する場合に使用する、そして様々な重大な遺伝子変異をともなったおよそ10のパスウエイが含まれている、といっており、癌の発症プロセスにかかわるこれらパスウエイの解明に力を入れている。

ジェイ・ウェインは、1996年に慢性骨髄性白血病にかかっていることを知った。彼はニューヨーク市の消防士で、健康が非常に重要であると常々考えていた。しかし、この病気が告知されたとき、彼は同時に治療の望みがほとんどないことも知らされた。彼を救うことができる唯一の治療方法は骨髄移植であったが、これにはドナーが必要であり、そのときは誰もいなかった。

その後、彼の病気は進行し続け、1999年には、致命的な段階にいたった。彼の余命は数週間と診断されていたが、このとき、彼には幸運が舞い込んだ。彼は、オレゴン健康科学大学(Oregon Health & Science University)が臨床試験中であった治療薬(Gleevec)の最後の被治験者の1人に選ばれたのである。そして、彼は現在も生存しており、その治療薬を今も服用し続けている。

同大学癌研究所ハワード・ヒューズ研究所のブライアン・ドラッカー(Dr. Brian Druker)博士はGleevec研究のリーダーを務めている。彼の治療法は、化学療法や放射線療法ではなく、それらを切り取るために一種の分子のカミソリを使用している。これは、遺伝性の癌に関する新しい手法の最初の成果である、とされている。

もし癌が遺伝性疾病であるとするなら、これに適する治療薬はないように見える。遺伝性の癌の場合、患者は発症プロセスを誘発する遺伝子を受け継ぐことになるが、癌へと変化するには数十年、場合によっては一生かかる。そのため、遺伝性癌の発病は通常、高齢者になって襲われることが多い、とされる。

ドラッカー博士は「癌以外の遺伝疾病は、1個あるいは2個の遺伝子変異によって起こるかもしれない。しかし、癌の場合は、多数の遺伝子が変異し、コピーされ、遺伝子産物である巨大な塊が再形成されていく」といっている。また、ハーバード大学医学部の助教授であるウイリアム・ハーン博士(Dr. William Hahn)は「(癌は)誰かが細胞の核の中に爆弾を投げ入れたようなものだ、といっている。

他の遺伝性疾患では、遺伝子の変異は細胞を不能にして死滅させるが、癌の場合は、遺伝子変異は細胞を制御不能の超大国にしてしまう。このことを知った研究者らは、遺伝子の複雑さを思い知らされるとともに、彼らを絶望感に陥らせた。

ハーバード大学やMITの研究所で癌研究プログラム・ディレクターを務めるトッド・ゴラブ(Todd Golub)博士は「100の遺伝子異常(がん遺伝子)がある場合、そのがん遺伝子を治療するには100の修復が必要となる。それは事実上不可能なことである」と述べている。

しかも、問題はもっと複雑であり、同じタイプの癌を持った患者間においても一人ひとりの癌遺伝子の変異はそれぞれ異なっていることが分かってきた。研究者らは、すべてのあらゆる患者のための新薬を発見する必要があると考えた。

ゴラブ博士は「人々は、‘それは絶望的とも思える問題であり、解決しなければならない問題をますます複雑にしている’と言っている。しかし、彼らも驚くように、現在では癌遺伝子を解明することは不可能ではないことが分かってきた。実際、癌細胞を保護している貫通できないシールドのように見えたものが、実は弱いものであることが次第に分かってきている。他を寄せ付けないように見えた癌細胞を死にいたらしめるようにもっていく方法が準備されつつある」と述べている。
そのルーツとなったのは、1980年代に、ジョン・ホプキンス大学のバート・ボーゲルスタイン博士(Dr. Bert Vogelstein, Johns Hopkins University)の1980年代のガン発症にかかわる複数の分子パスウエイ(molecular pathways)を統合しようという研究から始まった。
遺伝子と癌の関係について、研究者らは長年にわたって多くの発見を行ってきている。

1980年のジョン・ホプキンス大学のバート・ボーゲルスタイン博士(Dr. Bert Vogelstein)(癌へと導く分子のパスウエイの結合に関する研究がそのルーツであった。この時期、この問題はまだまだ錯綜していた。

ボーゲルスタイン博士が「ブラックボックスの集まり」(a total black box)といっていたので、他の研究者らも癌細胞は非常に異常なものであり、博士が言うとおりだろうと考えていた。

しかし、博士はあるアイディアを持っていた:

もし、大腸癌―それは癌にするいくつかの異常な特徴を持っている―から始めてみたら、アプローチしやすいのではないだろうか。というのも、大腸癌は確認可能な相を有しながら進展するからである。

小さなポリープあるいは腺腫(大腸壁細胞の良性の異常増殖)からより大きなポリープへと変化し、大腸の壁を通過して癌へと成長していく。博士は「その意味する」ところを考えた、と述べている。癌が身体中へと移動すること、つまり癌の転移が癌の最終段階である。「この一連の変化は、大部分の癌で発生していると考えられる。しかし、これらの成長段階を全て示すサンプルを手に入れることのできる癌はそれほど多くはない。大腸癌の場合、病理学者が大腸内視鏡(colonoscopies)を使ってポリープおよび線腫(adenomas)を採取したり、外科医が癌の手術中に病巣を採取したりすることができる。また、大腸癌などでは家族性(遺伝性)の癌遺伝子を有する患者がいるため、そのような研究が求められていた」と説明している。こうして、ボーゲルスタイン博士らの研究グループは可能なあらゆる方法での大腸癌の遺伝子研究を始めた。

1990年代中頃までには、大体のアウトラインを確認した。これらには多様な遺伝子変異、広範囲の遺伝子欠失(gene deletions)、再生成などがあり、大腸細胞を癌化させる重大な変化には5つのパスウェイがあることが分かった。これらのパスウェイを不能にする方法は多数あるが、それらは同じ結果を導くものであった。遺伝性大腸癌の素質を持った人々は、それらのパスウェイのうちの1つが細胞に存在することで遺伝子の変異が起こり、がん細胞へと変化する。さらに、そのほかの若干の遺伝子の突然変異や細胞も細胞を癌に成長させることが可能である。

ドラッカー博士は、大腸癌についてのこのような物語こそ、「正確には、すべてのあらゆる段階ですべてのあらゆる癌のために必要とされるパラダイムである」と述べている。

その時点で、科学者たちは、次に何をすべきかについて、混迷状態に陥った。大腸癌で起きたことを、他の癌でも個々に遺伝子異常を発見するという作業を行うのは何十年もかかるのではないかと、考えられた。

しかし、つい最近、転換点が新しいテクノロジーの実用化によってもたらされた。すなわち、一つはマイクロアレイあるいはジーンチップの利用であり、もう一つはRNAiテクノロジーである。

マイクロアレイあるいはジーンチップの利用は癌細胞において活発に発現している遺伝子や遺伝子のどの部分が増幅されているか、それとも欠失されたかを識別できるようになった。

RNAi(RNA干渉)と呼ばれる別の方法では、特定の遺伝子に干渉する(発現しないようにする)ことによって、細胞にどのような変化が起きるかを確かめることができるようになった。

また、DNAシークエンシングの新しい方法は、どの遺伝子についてもそこでどんな変化が起きているかを確かめることを実現可能にした。

国立癌研究所(NCI)および国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)は、最近、癌細胞中の遺伝子異状をマッピィングする3年間のパイロットプロジェクトを発表した。このプロジェクトについて、ドラッカー教授はプロジェクトが「癌のアキレス腱を全てを解決する最初のステップである」と述べている。

ゴラブ博士も癌の問題の解決は非常に重要なことであると述べている。また、彼は「我々は初めてこの問題に挑戦するのに必要なツールを手に入れた。そして、もし学会などが一緒になってこの病気に関する遺伝学的基礎を解明することに働くならば、私は癌についてどのように理解すればよいかを将来にわたって変えさせることができる、と考えている」とも述べている

原理はすでにここにあり、残された課題はその詳細である、と研究者らは言っている。

残されるものはその詳細である:

①医薬品の標的になる可能性のある遺伝子変更

MITの生物学科の教授でホワイトヘッド研究所の研究員でもあるロバート・ウエインバーグ(Robert Weinberg)は「我々は癌の全ての問題を解明するための武器を手に入れつつある。我々は、悪性腫瘍を創るのに必要とされるすべての癌細胞のリストを完成した。このリストは、細胞が癌へと進展する場合に使用する、そして様々な重大な遺伝子変異をともなったおよそ10のパスウエイが含まれている。通常、細胞の成長に拍車をかける結果をもたらすような、あるいは細胞の成長を遅くさせる遺伝子の成長を遅らせる遺伝子を捨てさせるような遺伝子の変異が起こる。また、細胞が永久に分裂を続け、やがては破綻に導くようにさせるいくつものことを可能にする変異がある。そのほかにも、癌細胞に支援し、かつそれらを成長させるために正常組織を補充させるような変異もある。また、ウェインバーグ博士は,変異によって癌細胞が免疫系の働きをブロックしてしまうこともある、と付け加えた。

博士はまた、癌が拡大していく場合に転移がおきるが、細胞が遺伝子を活性化させるのは、通常、胚性幹細胞が成長する場合、細胞が移動する場合、あるいは器具口を修復する場合である、といっている。

しかし、このような非常に多くの遺伝子変異が問題を生じさせる:

②細胞はどのようにそれらを獲得するのだろうか。

細胞分裂では、突然変異が偶然に生じると確率は100万回に一回程度である、とウェインバーグ博士は述べている。2つの突然変異が同時に起きるのは10兆回に1回の確率である。さらに3つが同時に起きる確率はのの機会は100万回×100万回×100万回×100万回に1回である。このとてつもなく遅い突然変異の確率は、健康な細胞がすばやく損傷したDNAを修復するという事実によってもたらされるものである。

「DNAの修復は、我々が多数の遺伝子突然変異の攻撃にさらされないようにするための防波堤の役目をしている」とウェインバーグ博士が述べている。しかし、癌への道を開く場合に細胞が最初に行うことの1つは、この修復メカニズムを不能にすることである。事実、BRCA1および2では、その遺伝子変異が患者を乳癌や卵巣癌へと導き、同様にいくつかの遺伝性の癌の場合も、親から相続した癌遺伝子は、これらの修復システムを不能にするように働く。

遺伝子の変異がスタートすれば、後は「雪だるまのように、次々に連鎖反応が起きて大きくなっていく」とボーゲンスタイン博士は言っている。


この記事の続き、および記事の全文は、下記サイトから

http://www.spikeharris.com/somethingevil/2005/12/cancer-news-from-the-ny-times/

 

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